2018 Fiscal Year Research-status Report
A Comparative Study on the Way of Caring unearthed Indigenous Human Remains and Associated Burial Objects
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18K12548
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
岡田 真弓 北海道大学, 創成研究機構, 特任助教 (80635003)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 先住民族 / アメリカ / 遺骨 / 副葬品 / 発掘・発見 / 返還 / NAGPRA / パブリック考古学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、アメリカにおける合衆国有地、部族保有地、私有地から発掘あるいは発見された先住民族の遺骨・副葬品の取扱に係る法制度およびその運用実態を理解し、今後日本でも整備が急がれているアイヌ民族の精神文化に配慮した埋蔵文化財の管理体制構築のための示唆を得ることを目的としている。主な研究方法は、①アメリカの埋蔵文化財の取扱およびアメリカ先住民族の文化遺産保護に関する現行法を理解するための資料調査と、②発掘調査や建設工事等によって発掘・発見されたアメリカ先住民族の遺骨・副葬品の管理や返還に携わった経験を持つ関係者に対するヒアリング調査である。 本年度は、①と②について次のような研究調査を行った。最初に、「アメリカ先住民族墓地保護・返還法the Native American Graves Protection and Repatriation Act(以下、NAGPRA)」などのアメリカ先住民族の遺骨・副葬品に係る法制度に関する文献の精査、およびヒアリング調査地に関する先行研究を整理した。次に文献調査を踏まえ、アリゾナ州ツーソンにおいてヒアリング調査を行った。ヒアリング調査では、国有地の発掘調査で出土したアメリカ先住民族の遺骨・副葬品を管理するアメリカ陸軍工兵隊、陸軍工兵隊等の政府組織から発掘調査を請け負うスタティスティカル・リサーチ社、および先祖の遺骨・副葬品の管理や返還について前述の組織と交渉にあたった経験を持つアメリカ先住民コミュニティの関係者から、様々な知見を得ることができた。とりわけ、アメリカ先住民族の精神文化に配慮した出土遺骨・副葬品の管理を行うための、(a)各組織の役割、(b)先行事例と現在の取組、(c)遵守している倫理綱領、(d)先住民コミュニティ内での活動、(e)現在の課題、といった点が明らかになったことは本年度の調査成果である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度予定していた調査研究は、おおむね達成することができたため。 過去に研究機関に収集され、保管されてきたアメリカ先住民族の遺骨・副葬品の返還に関する先行研究は散見されるが、本研究がテーマとする出土した先住民族の遺骨・副葬品の管理・返還の運用実態はほとんど議論されていない。それゆえ、当該テーマに関する法制度の理解に加え、実態を把握するための関係者へのヒアリングは、本研究の進捗状況を大きく左右するものである。幸いにもヒアリング予定者全員から研究協力を得ることができ、加えて出土した先住民族の遺骨・副葬品の管理・返還の運用実態について、政府機関、発掘調査会社、先住民コミュニティという異なる立場から多様な知見を寄せていただいた。ヒアリング調査は、本課題に関係する人的ネットワークの構築だけでなく、文献からは見えてこない法制度の運用における課題の発見、および今後の研究でさらに追究すべきテーマの発見にもつながった。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度と同様、次年度も①関連する資料調査、および②アリゾナ州ツーソンで国有地や部族保有地の発掘調査から出土したアメリカ先住民族の遺骨・副葬品の管理に関する現地調査を行う。とくに、アメリカ先住民コミュニティが、先祖の遺骨・副葬品の管理に求める文化的な配慮cultural sensitivityを徹底するための取組に着目する。具体的には、ソルトリバーインディアンがアメリカ陸軍工兵隊、発掘調査会社、建設工事従事者、博物館などの非先住民側に対して実施している「文化的配慮プログラム」を起点にして調査計画を立てる。 また今年度の調査成果の一部を、次年度発刊予定の『考古学ジャーナル』にて発表するとともに、英語の論集にも寄稿予定である。
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Causes of Carryover |
今年度予定していた人件費・謝金が不要となったため、残高が生じた。 当該残高は、来年度に行う現地調査のための旅費に充当する予定である。
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Research Products
(1 results)