2019 Fiscal Year Research-status Report
Transformation Process of Jomon Society in the Early First Millennium BC
Project/Area Number |
18K12557
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Research Institution | Akita International University |
Principal Investigator |
根岸 洋 国際教養大学, 国際教養学部, 准教授 (20726640)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 亀ヶ岡社会 / 気候変動 / 溝状遺構 / 木柵列 / 寒冷化 / 社会システム / 狩猟採集民 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、地球規模の寒冷化が起こったと考えられる紀元前一千年紀前半において、縄文時代晩期の亀ヶ岡社会が初期農耕社会へと移行したプロセスを、居住・生業・祭祀の各社会システムの変容に着目した多角的視点から明らかにすることを目指すものである。2019年度は以下に述べる通り、居住・生業・祭祀の各システムを復元するための調査研究を実施した。
(a) 居住システム:縄文時代晩期後半の代表的な集落遺跡である、上新城中学校遺跡(秋田市)の発掘調査を2019年8月に実施した。結果として縄文時代全般を見ても極めて稀な居住域を囲む木柵列の一部を検出した。その成果を日本考古学教会第86回総会研究発表にて紙上発表した(2020年5月に予定されていたが中止となり、要旨集による紙上発表となった)。またこの研究成果の一部については、2020年度に刊行予定の単著(『東北北部における縄文/弥生移行期論』)に発表した。 (b)生業システム(古気候・古環境):多量の有機質遺物が出土したことで知られる鐙田遺跡(湯沢市)の、既往調査時の出土遺物の再整理を実施した。2018年度に作成した出土遺物のデータベースを元に、出土土器の実測作業を行った。出土木柱の年輪年代等に関しては、基盤研究(S)「年輪酸素同位体比を用いた日本列島における先史暦年代体系の再構築と気候変動影響評価」(研究代表者:中塚武)の研究プロジェクトに加わりつつ、本研究課題から提供した資料の年輪年代分析を実施している。 (c)祭祀システム:本研究課題の申請書に記していた雄物川流域に加え、隣接地域の祭祀遺物の資料収集を行った。また類遠賀川系土器を用いた墓制に関しても研究成果をまとめ、前述の単著として刊行予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
3ヶ年からなる本研究の2年目に予定していた研究内容を順調に実施できた。
(a)に関しては、秋田市との打ち合わせ、所属機関における発掘調査実習科目の実施、並びに研究協力者との共同研究も予定通りに進行し、年度末には調査成果の発表を実施することができた。本遺跡の事例に加えて縄文~弥生時代の溝状遺構についても資料集成を行い、当該遺構が東北北部のいくつかの地域でほとんど同じ時期に出現した要素であることを明らかにした。これは先行研究で指摘されてこなかった点であり、東北北部の地域的特性であるとともに、今後列島規模で比較検討する必要があると思われる。 (b)については初年度に引き続いて鐙田遺跡出土遺物の整理作業を行い、図化作業を順調に実施することができた。昨年度は地権者の同意を得る手続きが間に合わず、ボーリング調査が実施できなかった。 また(c)では土偶・土製品の収集作業を継続したほか、類遠賀川系土器を用いた墓制についても研究成果をあげることができた。これらに加えて交易システムについても研究を行い、東北北部における碧玉製管玉について論文を執筆した。なお交易システムについては申請時には予定していなかったものの、2018年度に実施した研究の結果、本研究課題の一環として実施するのが適当と判断した項目である。
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Strategy for Future Research Activity |
3年目においては、(a)居住システム、(b)生業システム、(c)祭祀システムの全てで研究成果を報告することを目指す。 (a)では上新城中学校遺跡の発掘調査報告書を出版する予定である。 (b)では鐙田遺跡の整理作業を継続し、年度末までに再整理作業報告書を刊行する予定である。秋には地権者からの許可を得て本遺跡のボーリング調査を実施し、遺跡範囲を再確認すると共に有機質遺物の検出を目指す。既にサンプリングを終えている木柱については、その年輪年代とともに酸素窒素同位体比による気候変動復元に関する論文執筆を行う。 (c)では祭祀遺物の消長を考察するための資料収集を完成させ、特に土偶に関しては年度内に論文執筆を行う。鐙田遺跡出土の土偶については、三次元計測を含む図化ならびに資料報告を行う。
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