2021 Fiscal Year Research-status Report
考古学的分析手法を導入した博物館収蔵アイヌ民具資料の基礎的研究
Project/Area Number |
18K12558
|
Research Institution | Hokkaido Museum |
Principal Investigator |
大坂 拓 北海道博物館, アイヌ民族文化研究センター, 学芸主査 (60761658)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | アイヌ / 物質文化 / 民具 |
Outline of Annual Research Achievements |
当所の計画では、令和3(2021)年度は研究の最終年度にあたり、これまでの成果を総括する論文をとりまとめることを予定していた。しかし、新型コロナウイルス感染症の拡大に起因する各地の施設の臨時閉館、所属機関における移動制限等の措置が長期化しており、各地に収蔵されている民具資料の調査を実施するという計画に大きな遅れが生じている。このような状況を受け、それぞれの年度に民具資料を品目毎に調査するという調査方法を一部見直し、都市間の移動を要しない札幌市周辺施設における民具資料・関連文書史料の個別的な検討を先行して実施し、感染状況の落ち着きを見極めて周辺地域へと調査を広げる方針をとることとした。 本年度は、アイヌ民族が製作した「花茣蓙」、及びそれを素材とする鞄類を含む茣蓙類に関する分析をおこなうための基礎データを得るために、北海道博物館が所蔵する資料全点の写真撮影・計測を実施するとともに、製作技法や素材に関する観察表をまとめた。北海道博物館所蔵資料には、旭川市、浦河町、白糠町の伝承者が1970年代に製作した資料が含まれていることから、他地域で製作・使用された資料との比較検討をおこなう際に、重要な指標とすることが可能である。 また、近代におけるアイヌ民族の生業の実態を把握するための作業として、北海道立文書館が所蔵する開拓使文書のうち、明治前半期の旧天塩国・北見国・根室国、及び石狩国のアイヌ民族に関する史料の調査を実施し、それぞれまとまったデータを得ることができた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新型コロナウイルスの感染拡大により、予定していた民具資料調査の多くが実施できていない状況にあり、その意味では研究の進捗は遅れていると言わざるを得ない。しかしながら、代替措置として実施してきた札幌市周辺での調査において、研究開始時点には予想していなかった資・史料を数多く見いだしたことが研究成果として結実している。また、そうした成果に対する反応として、各地の機関・個人から関連資料の所在などに関する情報が寄せられ、研究の質の向上に結び付いている。以上の点に鑑み、進捗状況はおおむね順調と判断した。
|
Strategy for Future Research Activity |
新型コロナウイルス感染の状況を見極めて調査実施時期を判断し、特に遅れている北海道北東部(旧天塩国・北見国・根室国)での調査を速やかに実施する。その成果の公表は、所属機関の紀要への投稿を予定している。
|
Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症の拡大により、北海道内で実施を予定していた現地調査が延期を余儀なくされたため、旅費の支出が当初の計画を大きく下回った。研究期間を一年延長したことを受け、次年度は感染症の抑制を期して速やかに調査日程を調整し、確実に計画を履行することとする。
|
-
-
-
[Book] アイヌのくらし――時代・地域・さまざまな姿2021
Author(s)
大坂拓, 谷本晃久, 八幡巴絵, 八谷麻衣, 大矢京右, AINUance, 亀丸由紀子, 田中祐未, 猪熊樹人, 司馬哲也, 貝澤徹, 山崎幸治, 瀧口夕美, 北原モコットゥナシ
Total Pages
300
Publisher
公益財団法人アイヌ民族文化財団