2018 Fiscal Year Research-status Report
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18K12559
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Research Institution | Tokyo National Museum |
Principal Investigator |
河野 正訓 独立行政法人国立文化財機構東京国立博物館, 学芸研究部, 研究員 (60634623)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 考古学 / 古墳 / 鉄器 / 農工具 / 系譜 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は日本列島出土の古墳時代農工具を対象にして、朝鮮半島出土農工具と比較検討することで、日本列島出土農工具の技術系譜を明らかにする事を目的とする。実物資料を直接観察し、調書を作成し、実測や撮影など記録を行うことに調査の重点を置き、また出土遺跡の踏査や周辺地域の状況を把握するため博物館の展示調査も併行して行い、出土品の状況もわかる古記録も参照しつつ、総合的に分析を進めたのは、遺跡の性格や共伴遺物の系譜から農工具の系譜を解明する一助となると期待したからである。 数多くの農工具のなかでも柄付手斧(柄が鉄で作られている斧)は、古墳時代前期から中期にかけての外来系農工具の代表格であるが、山梨県大丸山古墳出土品や群馬県高崎市岩鼻町出土品など実測調査ができ、申請前の調査とあわせて日本列島出土柄付手斧のほぼすべての出土品の実測が完了した。柄付手斧の分析から、当初は外来系農工具として朝鮮半島から伝わったものが独自に日本化し、逆に朝鮮半島へ逆輸入するモデルを構築する見通しを得た。今後論文化し、報告する予定である。 このほか岐阜県船来山古墳群出土品(本巣市教育委員会、東京国立博物館蔵)、群馬県金井東裏遺跡出土品(群馬県埋蔵文化財事業団蔵)などで基礎的な検討を進め、農工具の資料報告を行った。山口県赤妻古墳出土品(山口県立山口博物館蔵等)の検討では、明治年間で執筆された古記録を参照しつつ未報告資料の解明に努め、いわゆる外来系のミニチュア農工具の系譜を考える材料を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成30年度は15の博物館、4つの古墳、1つの古文書館にて調査や踏査を行った。東京国立博物館所蔵品の実測調査も順調に進み、写真撮影も一部行った。当初予定していた韓国での調査ができておらず、その点遅れ気味であるが、令和元年度に韓国訪問する予定である。山口県赤妻古墳出土品は、三機関に分散して保管されており実態がつかめなかったが、本研究をきっかけに悉皆調査をして資料化することで関係機関との合意もとれ、当初想定していなかった波及的な成果も現れている。
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Strategy for Future Research Activity |
博物館など訪問し、令和元年度以降も基礎調査を継続して続け、外来系農工具の系譜の解明に努める。資料の図化や撮影が終わったものから資料報告を行い、個々の器種ごとの論文化も随時進める。韓国にも渡航し、基礎資料の収集に努め最新の朝鮮半島出土農工具研究の状況把握を行う。
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Causes of Carryover |
平成30年度夏に韓国に渡航するよう準備を進めていたが、諸般の事情により、やむなく年度を跨ぐことにした。令和元年度に申請することとし、その経費に充当することとした。
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Research Products
(2 results)