2018 Fiscal Year Research-status Report
赤外スペクトル解析に基づく新しい石英石器産地分析手法の開発
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18K12565
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Research Institution | Teikyo University |
Principal Investigator |
金井 拓人 帝京大学, 文化財研究所, 助教 (60779081)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 石英石器 / 産地推定 / 赤外分光分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は石英石器の産地分析手法を新たに開発するものであり,はじめに基礎研究として,甲府花崗岩体中の5つの鉱床の石英を対象として分析条件の検討を行った.次に検討した条件に基づいて,山梨県内の釈迦堂遺跡群I区,堰口遺跡,獅子之前遺跡,上コブケ遺跡の石英製遺物の赤外分光分析を行った.出土遺物のうち概ね5割の試料が分析でき,この資料の分析可能数は当初の想定を上回る結果となった.次に分析によって得られた赤外スペクトルを利用して原産地と遺物の石英の比較を行った.この成果は日本旧石器学会にて報告したが,その後の検討により石英の赤外スペクトルが流体包有物として存在する水の影響を大きく受けることが明らかになった.そのため,現在では水の影響を取り除いた産地推定指標の作成に取り組んでいる.予察的な結果ではあるが,釈迦堂遺跡群I区,獅子之前遺跡,上コブケ遺跡では竹森鉱床産の石英が半数以上を占めるという結果を得ている.堰口遺跡については半数以上の資料で比較に用いた5つの鉱床のどの石英とも一致しておらず,現在までの結果では主とする原産地がどこだったのか明らかにできていない. また遺物の観察中に一部の石英石器の中に電気石などの固相包有物が確認できた.電気石の化学組成は石英の産地ごとに異なる可能性があるため,当初の研究実施計画には含まれていないものの電気石の組成分析も行った.この結果,釈迦堂遺跡群I区,堰口遺跡,獅子之前遺跡,上コブケ遺跡のすべての遺跡で竹森鉱床産の石英が利用されていることが明らかとなった.加えて堰口遺跡においては松木尾根産の石英も利用されていることが明らかとなった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
赤外分光分析を石器石材の分析に導入するための基礎研究を計画通り終了することができた.また,当初計画にはなかったものの石英に包有された電気石の化学組成データから赤外分光分析の結果を支持するデータを得ることができ,石英石器の産地分析手法を新たに開発するという研究目的は達成しつつある.産地分析用指標の作成については当初計画よりも遅れているものの,遺物の分析が計画以上に進展しており,研究全体としてはおおむね順調に進展していると判断できる.
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Strategy for Future Research Activity |
当該研究の最終年度にあたる2019年度は,赤外スペクトルを用いた産地分析用指標を確立し,原産地および遺物の石英の分析点数を増やすことに取り組む.これらの成果報告を行うとともに研究全体の成果を取りまとめ,新しい産地推定手法というツールを用いた石器研究の新たな研究展開の方向性を検討する.また,本研究は宝石学からも着想を得た研究であり,宝石学方面からも本研究の成果が活用できるよう環境整備に着手する.
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Causes of Carryover |
当初購入を予定していた統計解析用のコンピュータを今年度に購入しなかったため物品費使用が減少した.また,天候不順で鉱山調査を複数回中止したため調査補助者への謝金使用が減少した. 次年度は産地分析用指標の作成に本格的に取り組むため,統計解析用にコンピュータを購入する計画である.
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