2022 Fiscal Year Annual Research Report
Zooarchaeological research on late Pleistocene large Cervidae
Project/Area Number |
18K12567
|
Research Institution | National Museum of Nature and Science, Tokyo |
Principal Investigator |
澤浦 亮平 独立行政法人国立科学博物館, 人類研究部, 協力研究員 (20816201)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 後期更新世 / 旧石器時代 / 動物考古学 / シカ類化石 / 下地原洞穴遺跡 / マイクロウェア |
Outline of Annual Research Achievements |
歯エナメル質のマイクロウェア(微小摩耗痕)の分析を進める上で、印象精度が重要な問題となるが、従来の研究で多用されてきたシリコーン印象材が国内で入手し難いため、代替可能な材料の検討を行ったところ、収縮率と硬化の経時的な変化が印象精度を左右するという結果が得られた。これらの成果を共著で国際誌に発表した。 また、久米島町下地原洞穴遺跡の調査研究においては、最終年度に試掘坑1(TP1)から出土した海産貝類2点の年代測定を実施し、グスク時代の年代値が得られた。そこで、改めて堆積を精査したところTP1のⅡ層までは攪乱された2次堆積である、と認識を改めることとなった。一方、試掘坑2(TP2)では、褐色から灰褐色の第Ⅳ層中にシカ類化石の集中箇所を検出した。シカ類はわずかな範囲に複数個体分が包含され、その一部は交連した状態を保っていた。シカ類化石の集中は硬い粘土中に生じた割れ目やその割れ目と水流によって生じたくぼみのような場所に顕著に認められた。また、化石を多含する堆積物には水流との関連が推定される微細構造やマンガンノジュールが認められた。さらに角などの一部の部位には齧歯類やシカ類の噛み跡が顕著に観察された。したがって、死後、地表に白骨化した部位が露出している期間を挟み、軟組織が完全に分解される前に水流とともに洞窟内へと遺体が流れ込んで埋没した、と推定できる。 研究代表者の所属変更、新型コロナウイルスによるパンデミック等の影響で、本研究は当初の研究計画からは方針を大きく転換せざるを得なかったが、エナメル質マイクロウェア分析の基盤となるシリコーン印象材についての重要な知見が得られたことに加え、未解明であった更新世の絶滅シカ類化石の産状に関する新知見を蓄積できたという点において大きな成果が得られたと考える。
|