2018 Fiscal Year Research-status Report
Development of a novel management system for storage of iron artifacts based on prediction technique of deterioration characteristic
Project/Area Number |
18K12570
|
Research Institution | Nara National Research Institute for Cultural Properties |
Principal Investigator |
柳田 明進 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所, 埋蔵文化財センター, 研究員 (30733795)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | 鉄製遺物 / 現地保存 / 保管環境 / 腐食 / カラム実験 / 交流インピーダンス / 埋蔵環境 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は鉄製文化財が出土した遺跡の埋蔵環境から、鉄製文化財の保管・展示環境下でのさらなる劣化進行の有無を予測し、それを未然に防ぐべく個々の鉄製文化財に応じた適切な保存・展示環境の提案を可能とすることを目的としている。具体的には、室内実験から塩化物塩が鉄製文化財内部に集積する埋蔵時の環境条件を把握することで、1)発掘時の埋蔵環境から発掘後の腐食の危険性を予測することを可能とする。この予測技術を確立することで、2)処置中の新たな腐食の進行をともなう危険のある安定化処置の実施に対して、要不要の判断が可能となる。さらに、3)低湿度環境下での保存が必要な鉄製文化財の見極めから、収蔵庫全体の空調に頼ることのない、個々の出土鉄製文化財の腐食特性に応じた対応が可能となると考えられる。 平成30年度は、土中での鉄製遺物の腐食に顕著に影響を及ぼすと考えられる水分および酸素濃度の影響を検討するため、土壌カラムを用いて遺跡の環境を鉛直一次元で再現し、深度ごとに腐食速度、土中の酸素濃度、水分状態などを計測するカラム実験を実施した。その結果、腐食速度は、1)水分飽和領域では、間隙水のDOの拡散が緩慢であることで停滞し、2)水分不飽和領域では土中の気相を介して気相酸素が速やかに移動し、電極でのカソード電流が上昇することで顕著に上昇するとともに、3)水分不飽和状態でさらに水分状態が低下した場合、腐食反応がアノード律速となることで停滞する、と推測された。すなわち、水分不飽和領域のある深度で認められる腐食速度の上昇は、土中の空隙を介した気相酸素の供給と、二価の鉄イオンの水膜中の作用極近傍からの除去の均衡が保たれる水分状態で生じると推察された。これらの成果については、日本文化財科学会第35回大会で学術発表した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成30年度に予定していた、遺跡の環境を鉛直一次元で再現したカラム実験については、一連の結果が得られている。さらに、用いる土壌を当初予定していた粘土に加えて、砂質土においても実施しており、土粒子の粒径の差異が腐食に及ぼす影響についても検討した。さらに、より詳細な腐食機構を検討するための、微小酸素電極を用いた新たな実験装置の作製に着手した。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成31年度は以下の2点を中心に研究を進める。 1.継続してカラム実験を実施するとともに、微小酸素電極を用いた新たな実験に着手することで、土中の酸素、水分状態の変化が鉄製遺物の腐食機構におよぼす影響を検討するとともに、そのモデル化に取り組む。 2.埋蔵環境下での鉄製遺物内部への塩化物塩の集積に影響する腐食生成物層の成長と、埋蔵環境の関係を検討するため、X線CTによる撮像を用いて腐食生成物層の成長を評価する、新たな実験に着手する。
|
Causes of Carryover |
実験に使用する機器の納品が間に合わず、次年度での購入になったため。
|
Research Products
(5 results)