2018 Fiscal Year Research-status Report
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18K12579
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
鈴木 允 横浜国立大学, 教育学部, 准教授 (70784651)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 近代 / 都市化 / 人口移動 / 寄留 / 工業化 |
Outline of Annual Research Achievements |
産業化が進んでいた近代日本において、都市化と人口転換という2つの大きな人口現象がどのように発生・進行したのかを、人口移動の分析から明らかにする目的の達成のために、具体的な事例地域・時代として大正~昭和初期の愛知県東加茂郡賀茂村を取り上げ、そこからの出寄留の実態を、寄留届などの寄留関係資料から明らかにする作業を行った。 平成29年度までの研究成果により、①当時の出寄留者の寄留先が圧倒的に都市部であること、②出寄留者は若年層が大部分を占めること、③永住ではない、寄宿舎等への単身での出寄留者と、永住を前提とした世帯ぐるみの出寄留者の両方が主流と言えること、などが明らかにされていた。本年度の成果はその延長上に位置付けられるが、特に、大正期以降における時代変化の傾向と、寄留者の職業の分析を進めた点が挙げられる。 前者に関しては、大正期から昭和初期にかけて、「永住ではない、寄宿舎等への単身での出寄留者」の数は横ばいで合ったが、「永住を前提とした世帯ぐるみの出寄留者」が大きく増加していった傾向を突き止めた。このことは、対象期間内の都市部への移住傾向の拡大や、都市で生計を立て、世帯での生活を維持できる移住者の増加を示しており、都市人口の増加の実態を示した成果であると考えている。 後者に関しては、女工としての大工場の寄宿舎への移住が、出寄留者全体の中で非常に高い割合を占めていたことが明らかにされた一方、大都市への世帯での移住者は大企業や大工場の労働者としてではなく、商人や職人としての寄留者が比較的多いほか、無業として記録されている寄留者も多いことが明らかになった。こうした実態についてより詳細に分析し、既存の社会学等の研究成果に位置付けながら解釈していくことが課題として残された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上記の通り、寄留届の分析によって、大正期以降の都市部への寄留者増加の実態を明らかにすることができ、新たな研究視点として、職業の分析にも着手できた。また、一連の成果を学会発表の形で公にすることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究で得られた知見を学術研究の文脈に位置付ける作業を重点的に進める。 具体的には、①関連分野の学術研究成果に照らして位置づけること、②時代的、地域的な文脈の中に位置付けることを進める。 ①は、特に歴史社会学の成果との接合を検討していきたい。②については、今年度まで分析を続けてきた大正~昭和初期の愛知県東加茂郡賀茂村の寄留届に加え、愛知県西加茂郡石野村の寄留届のデータベース化も進めており、同様の分析を行い出寄留傾向を比較することで、知見の一般性や地域性を検討したい。また、時代的にも戦前期まで拡大させた分析の目途が立っており、引き続き分析を進めていく。
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Causes of Carryover |
外国出張を見越した旅費を計上していたが、別予算からの支出が可能となり、旅費の支出が削減されたため。必要な書籍をはじめとする物品購入が当初計画より膨らんだものの、全体では次年度使用額が発生した。 本研究の成果を発信していく上で、研究の位置づけの明確化や新たな分析上の視点を見出すことが重要であり、そのためには学会・研究会での報告機会や、研究者同士での情報交換を増やす必要がある。次年度使用額については、より積極的に学会、研究会等に参加していくための旅費として活用していく予定である。
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