2018 Fiscal Year Research-status Report
苦悩に対処する社会装置としての儀礼に関する人類学的研究:エチオピアの事例から
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18K12592
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Research Institution | Tokyo University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
松波 康男 東京外国語大学, 現代アフリカ地域研究センター, 研究員 (90811125)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | エチオピア / 南スーダン / 政府間開発機構(IGAD) / オロモ / 民族的ナショナリズム / 儀礼 |
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度の実績概要は以下の通りである。まず、2018年5月27日、日本アフリカ学会大55回学術大会において、口頭発表(表題「「南スーダンの紛争解決に対するIGAD構成国の関与」」)を行った。当発表では、東アフリカの地域機構IGADと南スーダン政府との関係性を整理しつつ、隣接国ゆえに生じる利害が和平合意締結に及ぼす影響について考察した。 また、2018年9月14日、プレトリア大学(南アフリカ)で開催された国際シンポジウム「Resource Management and Political Power in Rural Africa」(東京外国語大学・プレトリア大学共催)にて、口頭発表(表題:Oromo Nationalism and the Heritagisation in Ethiopia)を行った。当発表では、エチオピアのオロモ民族に注目し、近年生じた世界文化遺産登録運動と対政府抵抗運動という2つの事態がどのような関係するのかを、民族的ナショナリズムを鍵概念として整理した。 さらに、2019年3月4日から22日まで、現地調査を実施するためエチオピアを訪問した。当出張では、同国オロミア州における現下の情勢を理解するため、アディスアベバ大学・エチオピア研究所を訪問し、同国の研究者らと意見交換を行った。また、郡・行政村レベルでの動向につき理解を深めるために同州ボサト郡でフィールドワークを実施し、行政官にインタビューを実施したり、集落で参与観察を行い、同地の祈祷儀礼に参加するなどした。その結果、昨年の非常事態宣言下で行われた集団逮捕の被拘束者らが、新首相就任後に解放されていたことが確認できた。この点において、情勢は上向きと判断できるものの、他方、民族解放戦線の分派の反政府活動が活発化するといった、新たな展開を迎えていることも明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当該年度の研究では、当初の計画どおりオロミア州東ショア地方を拠点にフィールドワークを実施し、同地方の各所で実施されている祈祷儀礼について参与観察を行うことができた。また、本研究に関する口頭発表を、国際シンポジウム(「Resource Management and Political Power in Rural Africa」(東京外国語大学・プレトリア大学共催))で実施することができたことから、計画以上に進捗した状況にあると判断できた。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度についても、再び同地方およびオロミア州西部においてフィールドワークを実施する。儀礼参加者100世帯程度を対象とした世帯調査(訪問調査)を実施することで、人々の持つ苦悩の特徴を把握すると同時に、インタビュー調査を通じて苦悩の物語を聴取することを目標とする。帰国後は音声データの書き起こしを行い、また、統計資料の整理に努める。 また、次年度以降には、ナイル・エチオピア学会等で成果発表を行うと同時に、中間報告の位置付けで査読論文を発表する。その際には社会人類学、地域研究分野からのみならず、医療人類学分野からもフィードバックが得られるように心がける。最終的には、当初の計画どおり、本研究成果の集大成として国際学会で発表を行うと同時に、査読付きの英語論文を発表することで本研究を締めくくる。また、現地を訪問し、調査対象者やコミュニティに研究結果を還元する。
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