2020 Fiscal Year Research-status Report
苦悩に対処する社会装置としての儀礼に関する人類学的研究:エチオピアの事例から
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18K12592
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Research Institution | Meiji Gakuin University |
Principal Investigator |
松波 康男 明治学院大学, 社会学部, 准教授 (90811125)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 聖者信仰 / 土地収奪 / 民族間対立 / ベニシャングル・グムズ州 / オロモ / エチオピア |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題における本年度のおもな実績として右1-2の発表があげられる:1.(分担執筆)松波康男「ヤアの今日的状況:土地取引と民族対立のさなかで」石原美奈子(編著)『愛と共生のイスラームー現代エチオピアのスーフィズムと聖者崇拝』春風社448-471頁。2.(単著)「エチオピア 非常事態宣言の発出と農村社会」『月刊地理』65(6)96-102頁 。 上記1は、2019年末から2020年のはじめに報告者が本によって実施したフィールドワークに基づくものである。報告者は同稿で、デルグ政権期からアビィ ・アフメド政権の樹立期までに、エチオピア西部ベニシャングル・グムズ州のオロモ・コミュニティであるヤア村が、政権の移り変わりとともにどのように変遷してきたかを示した。ここ半世紀のなかで、エチオピアの政局が大きく変動した機会である、1974年の軍部主導の社会主義政権、1991年のエチオピア人民革命民主戦線(Ethiopian People’s Revolutionary Democratic Front: EPRDF)政権、そして2018年のアビィ政権の樹立の時期にヤア住民の社会、経済、宗教生活がどのような変化を経験したかを、フィールドワークに基づき報告した。 上記2も、本研究課題で対象とするオロモのコミュニティに関する論考である。2018年の非常事態宣言発出時に、オロミア州東ショア県の農村社会の住民が経験した集団逮捕などの混乱について、フィールドワークに基づき報告した。 また、2020年5月には、当初の計画通り日本文化人類学会で上記に関連する研究発表を行いフィードバックを得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の計画では、本年度はエチオピアに渡航しフィールドワークを行う計画であったが、新型コロナウィルスの世界的な感染拡大により渡航を伴う海外フィールドワークを断念せざるえない状況に陥った。年度を通じて感染が収束する見込みが立たなかったことから、研究計画全体の再考も必要になった。このような状況で、過去のフィールドノートを整理し直したり、文字起こしやデータベース化が終わっていない映像・音声資料の整理に着手するなかであらたな発見も得られるなど、当初の計画とは異なる仕方で研究を進めた。以上のとおり、本研究課題は完全な停滞に陥ったわけではないものの、現地調査ができなくなったことを重く受け止め「やや遅れている」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
現時点では、アフリカ東部に渡航できる可能性は高くないように思われるが、状況が好転し安全にフィールドワークが行える見通しが立つ場合には、短期間でもエチオピア・オロミア州でフィールドワークを実施しデータ収集を行いたい。 他方、フィールドワークが行えないような事態が続けば、引き続きこれまでの調査資料(フィールドノートや映像・音声記録)の未翻訳・未整理の箇所を活用可能なデータとする作業にあたりつつ、文献研究を実施することで研究を進める。 さらには、日本アフリカ学会学術大会や、国際シンポジウム等で本研究のこれまでの調査結果を発表し、議論・フィードバックの機会を得る。
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Causes of Carryover |
エチオピア・オロミア州でフィールドワークを実施する予定だったが、新型コロナウィルスの世界的な感染拡大により渡航を断念せざるえない状況となった。そのため当初は旅費と予定していた分を代替えの研究推進のための費用とするなど、使用計画に変更が生じた。
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