2018 Fiscal Year Research-status Report
Anthropological Study of Archive and Community: A Case of Holocaust Museum in Israel
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18K12596
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
宇田川 彩 京都大学, 人文科学研究所, 特別研究員(PD) (20814031)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | アーカイブ / イスラエル / 記憶 |
Outline of Annual Research Achievements |
2018年10月より現在に至るまで、イスラエルにおける現地調査を行っている。研究の第一段階として、イスラエル各地に点在するホロコースト関連の博物館・アーカイブ(北部:テレジンシュタット博物館、ゲットーファイターズ博物館等4館、中央部ヤドヴァシェム等、南部ヤド・モルデハイ等2館)について、その性格と概要を知るため訪問し、それぞれインタビューを行った。以上の調査については、現段階ではデータとして蓄積されている段階であり、研究論文としてまとめる作業は今後の課題である。 2018年7月に行われた国際学会European Jewish Studies Association(於・ポーランド、クラクフ)では、“Archiving Holocaust Materials: An Anthropological Perspective on Memory and Archive”と題し、日本におけるホロコースト教育と博物館を対象とした口頭発表を行った。この発表では、ポーランドやドイツから資料が日本にもたらされるに至った経緯を中心とし、日本で設立された博物館で語られるホロコーストについて考察した。 また、現在準備中の論文として、記憶の場としてのアーカイブに関する理論的整理を行うものがある。アルゼンチンのユダヤ関連のアーカイブとイスラエルの歴史・ホロコースト関連のアーカイブを主要事例とし、ユダヤ人としての集合的記憶とイスラエル人としての集合的記憶がそれぞれ構築される過程について論じる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2018年10月より現在に至るまで、イスラエルにおける現地調査を行っている。研究の第一段階として、イスラエル各地に点在するホロコースト関連の博物館・アーカイブ(北部:テレジンシュタット博物館、ゲットーファイターズ博物館等4館、中央部ヤドヴァシェム等、南部ヤド・モルデハイ等2館)について、その性格と概要を知るため訪問し、それぞれインタビューを行った。これらの研究はおおむね事前の文献調査や現地研究者による助言によってスムーズに進んだ。他方で、次項に述べる通り、現地調査により想定外の困難が認識された点もあった。 当初の計画通り、エルサレムにあるホロコースト博物館(ヤドヴァシェム)を主要な研究対象とすることに変更はないが、あわせてイスラエル南部にある「キブツ・ヤド・モルデハイ」にも焦点を当て、比較対象とすることとした。前者はイスラエル唯一のホロコーストに関する国立博物館であり、最もオフィシャルで巨大な研究施設としても機能している。他方、ヤド・モルデハイでは、キブツ(労働シオニズムの理想に沿って建設された集合居住地)として発展し、アーカイブの活動にも独自の発展があることが確認された。 また、研究の一つの目的・計画として、「研究および社会貢献の一環として、日本国内におけるアーカイブ研究と実践に寄与することを目指す」とした。この点については、2018年6月に広島における予備調査を行い、広島平和記念資料館のアーキヴィスト、語り部活動のボランティア、平和教育に関わる研究者等と交流・インタビューを行った。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、イスラエルにおける現地調査を継続する。今後の課題としては、「オフィシャルな語り」に偏向しがちであった博物館研究を見直し、よりコミュニティベース、あるいはオフィシャルな歴史観に対抗するようなアーカイブのあり方を探究することが挙げられる。 ただし、調査開始以降に判明したのは、想定以上に公的な語りの側面が強く、以上のような視点からの研究にある程度の困難が伴うことである。この点については、これまでに知己を得た大学研究者・アーキヴィストらの協力・助言を十分に得ながら進めていきたい。 また、同様の課題のためにはイスラエル以外の諸外国でホロコースト関係のアーカイブ、博物館での調査を行うことが必須である。具体的には、アメリカ(在ワシントン・ホロコースト博物館)やアルゼンチンでの調査を予定している。
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