2018 Fiscal Year Research-status Report
ケアの論理を通した〈自然=社会〉性と主体性の再検討
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18K12598
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
松嶋 健 広島大学, 社会科学研究科, 准教授 (40580882)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | ケア / 環世界 / 情動 / 生態学 / 人間ー生物関係 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度は主に文献のサーベイを中心に研究をすすめた。ケアに関する文献および人間と他の生物との関係性に関する先行研究は膨大であり、現在順次読みすすめているところであるが、これまで検討した範囲からだけでも、両方のテーマに共通する重要な視角として、情動(affect, affection)に関わる問題があることが明確になってきた。 情動には、感情(emotion)が例えば社会学などで従来扱われてきた「感情労働(emotional labor)」では抑制したり演技したりというかたちで管理されるべきものとして論じられてきたのとは対照的に、自己の情動的な経験のなかに積極的に沈潜していくことを通して他者とのあいだに新たなつながりを作り出すという契機になりうるという側面をもっている。情動のこうした側面は、「感じる身体」をもった人間同士、そして人間と他の存在を通底するような〈自然=社会〉性とそこにおける主体性の問題を考える上できわめて大きな意味を有していると考えられる。 ただし、この点を本研究のなかでさらに深く掘り下げて探究していくためには、今後のフィールド調査において情動の次元をどのようにすれば意味あるかたちで捉えられるのかという調査におけるアプローチの問題についてもあらためて検討する必要がある。少し回り道になるかもしれないが、次年度以降は、近年の情動に関する人類学的研究も視野に入れつつ、調査手法も練り直しながら研究をすすめることにしたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初計画では初年度に予備的な調査を二度実施する予定だったが、調査先とのスケジュール調整などの関係で一回だけしか行なうことができなかったため。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、フィールド調査を実施する前に情動に関する人類学の先行研究を検討し、情動に関わる問題について調査中にどのようにすれば効果的であるかをあらかじめ練った上でフィールド調査を実施する計画である。
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Causes of Carryover |
当初二度行う予定にしていたフィールドでの予備的調査を一度しか実施することができなかったため、それに充てる予定だった分を残した。当該助成金に関しては、今年度に実施するフィールド調査費に充てる予定である。
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