2020 Fiscal Year Research-status Report
ケアの論理を通した〈自然=社会〉性と主体性の再検討
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18K12598
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
松嶋 健 広島大学, 人間社会科学研究科(社), 准教授 (40580882)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ケア / 生態学 / 自然と社会 / 主体性 / 環世界 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、「環世界」の概念および「ケアの論理と倫理」に関する文献研究を中心に研究を行なった。前者については、「環世界(Umwelt)」という概念に理論的に重要な意味を与えた生物学者ヤーコプ・フォン・ユクスキュルにおける問題構成の背景やその意義を読み解くことで、「ユクスキュルの「問い」と「方法」」という論文にまとめることができた。そこから浮かび上がってきたのは、人間と人間以外の生物の両者を包み込む「自然の主体性」という考え方が持つ、近代の「主体性」概念に対する批判的潜勢力であり、今後研究をすすめるにあたってきわめて有益なものとなった。 後者に関しては、「ケアの論理」についての人類学者アネマリー・モルをはじめとする研究、および「ケアの倫理」をめぐるフェミニズムの研究を主として読解しながら、「ケア」という概念がもつ、狭義のケア労働の領域にとどまらない理論的含意を検討した。この検討を通して、ケアについて、具体的な行為である前に、見過ごされているニーズや苦しみに対する認識や責任の引き受けとして捉える視座を得ることができたが、こうした視座は、例えばCovid-19が現在もたらしているような社会変動の多様な側面について、自然と社会を横断して考えるためにも不可欠であると言える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初計画では本年度に複数回の現地調査を実施する予定だったが、新型コロナウイルスによる緊急事態宣言等の影響により、現地調査を行なうことができなかったため。
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Strategy for Future Research Activity |
現状においては、新型コロナウイルスの影響がいつまで続くかわからないが、可能であれば2021年度後半に現地調査を行なうことを考えている。もし2021年度も現地調査を実施することができないようであれば、引き続き「ケア」「主体性」「環世界」などの概念などをめぐる理論的研究を中心に据えて研究をすすめることとする。
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Causes of Carryover |
当初の予定では複数回実施することにしていた現地調査が、新型コロナウイルスの影響で行なうことができなかったため、それに充当する予定であった分を残した。当該助成金については、次年度に実施する現地調査等の費用として使用する予定である。
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