2021 Fiscal Year Research-status Report
信念と危機的経験の相互生成に関する人類学的研究:ヌエル難民の予言信仰を事例に
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18K12601
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Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
橋本 栄莉 立教大学, 文学部, 准教授 (00774770)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | アフリカ / 南スーダン / 紛争 / 難民 / 身体 |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度は、本研究の研究内容のうち、(1)南スーダン難民のあいだで形成される共同性や複数の知・実践の相互作用、および(2)ナイル系諸民族集団における精霊・神観念のトランス・ローカリティと歴史性に関する研究活動を行った。 2021年度4月~6月は、南スーダンおよびウガンダの難民・強制移動民を対象にして過去に行った調査データの整理・分析および成果の発表を行った。特に南スーダンの国内避難民が形成していた相互扶助の実践をもとに、現状の開発支援が内包する問題点および強制移動民の共同性について分析し、その成果を立教大学史学会大会で発表し、その報告をまとめて学術雑誌『史苑』に投稿し、出版した。 2021年7月~10月は、ウガンダの難民定住地および都市に暮らす南スーダン難民の若者を対象として過去に行った調査データの整理・分析をし、紛争後社会に暮らす若者男性の身体をめぐるジレンマや若者の身体性について2本の論考にまとめ、学術雑誌『史苑』に投稿し、出版した。 2021年11月~2022年2月は、ナイル系民族集団を対象にした歴史資料や古典的民族誌を収集・整理・分析した。これをもとに、南スーダン(旧スーダン)において、植民地期以前の歴史の中でどのように民族集団が流動し、集団を超えた関係構築を行ってきたかを分析した。その成果については、アフリカの紛争歴史研究会において口頭発表を行った。2022年3月はこの成果を論文にまとめる作業を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
過去の調査データを整理・分析し、その成果を学術論文にまとめて出版に至った点は研究がおおむね順調に進展していると評価できる。ただし、当初予定していた難民コミュニティへの現地調査は新型コロナウイルス流行のため渡航ができず、実施することができなかった。これにより、当初の計画以上に研究が進展しているとは言い難い。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は引き続き過去の調査データの整理・分析を続け、成果を論文としてまとめる。現地調査は今後も行うことが困難である可能性が高い。データ不足を補うために、例えば国際連合をはじめとする各種機関が発表している難民の調査記録を利用する必要がある。また、難民の歴史的生成過程を明らかにするために、南スーダン地域に関する歴史的資料をさらに収集し、分析する必要がある。
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Causes of Carryover |
2021年度に予定していたウガンダ、オーストラリアへの現地調査が新型コロナウイルスの流行により実施できなかったため。2022年度は、引き続き渡航ができなかった場合は、研究成果の出版など他の研究活動に使用する予定である。
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