2022 Fiscal Year Research-status Report
信念と危機的経験の相互生成に関する人類学的研究:ヌエル難民の予言信仰を事例に
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18K12601
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Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
橋本 栄莉 立教大学, 文学部, 准教授 (00774770)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 難民 / アフリカ / 宗教 / 紛争 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和4年度は、これまでウガンダ、南スーダンの難民定住区で行った調査研究をまとめ、いくつかの論考として出版した。 本研究の目的の一つは、南スーダンのヌエル社会における在来信仰が、難民の発生のような地球規模の変動とどのように関わり合っているのかを明らかにすることにあった。本研究は、現代の紛争と難民経験という新たな局面に際して、在来の信仰がどのように人々の紐帯やアイデンティティを支えるのかを解明し、移民・難民研究分野への貢献を目指すものである。令和4年度に出版した論考は、南スーダンの紛争後社会を対象とし、紛争による強制移動民がどのように複数の秩序を組み合わせながら新たな秩序を創造していたのか、そのなかで在来の神話や儀礼実践がどのような役割を担っていたのかを明らかにしたものである。当初の研究実施計画で予定していたウガンダでの渡航(補完調査)は、コロナ禍による海外渡航の制限によって実現しなかったものの、これまで行った現地調査で得たデータや歴史資料などを活用することでこれを補うことができた。 令和4年度に行った研究内容は、難民となった人々自身が自らの文化的な装置と移動先の秩序の様式をうまく運用しながら秩序を作り上げる方法を解明した点で社会的な意義を持つと考える。地域を問わず、難民の生活世界が当事者以外の視点から画一的に切り取られ報道されることの多い昨今の状況の中、本研究により解明された難民の別の側面は、「難民」と括られてきた人々の多様性と流動性、そして歴史性を明らかにすることに貢献するものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新型コロナウイルス蔓延につきウガンダでの補完調査は実現しなかったものの、これまで行った現地調査で得たデータや、報道資料、歴史資料などを活用することでこれを補うことができ、成果物としていくつかの論考を出版することができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は引き続き現地調査に基づき得られたデータをまとめ、論考として出版してゆく。可能であれば書籍化し、社会的関心が高まっている難民という対象について、人類学的・民族誌的研究の可能性について社会に広めたい。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス蔓延により海外渡航が困難となり、予定していたウガンダでの調査が実施できなかった。 来年度は、これまでの調査研究をまとめ書籍化することを視野に入れており、残高は成果出版物用の予算とする予定である。
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