2019 Fiscal Year Research-status Report
プロテスタント・キリスト教の受容を通じたカレンの人間観の変容:魂から精神へ
Project/Area Number |
18K12605
|
Research Institution | Daito Bunka University |
Principal Investigator |
田崎 郁子 大東文化大学, 国際関係学部, 講師 (00760711)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | プロテスタント・キリスト教 / 人間観の変容 / 宣教活動 / 開発プロジェクト / タイ / カレン |
Outline of Annual Research Achievements |
投稿論文を2報執筆し発表した。 田崎郁子2020「タイ北部におけるバプテスト派宣教の歴史的変遷と開発プロジェクト:ボーケーオ地区のカレンを事例として」『大谷大学真宗総合研究所研究紀要37』大谷大学真宗総合研究所37、1-27頁(単著) 池上哲司・松澤裕樹・藤原智・稲葉維摩・田崎郁子2020「宗教的言語の受用/形成についての総合的研究」『大谷大学真宗総合研究所研究紀要37』大谷大学真宗総合研究所、53-76頁(共著、担当部分は「第五章:タイにおけるバプテスト派カレンの信仰体系素描」72-76頁) 1報目は、タイ北部におけるバプテスト派キリスト教の中心地の1つであるボーケーオ地区を事例に、1930年代から2000年代までカレンを対象として行われてきた宣教活動の過程を示したものである。本稿では、宣教活動と開発プロジェクトが車の両輪のように入れ子状になって進められてきたこと、それが現在換金作を大々的に導入しカレンらしからぬとされる当地の忙しい生活を形成する母体となったと論じている。 2報目は、従来あまり論じられてこなかった北タイのバプテスト派カレンのキリスト教信仰体系についてのスケッチである。キリスト教への改宗当初、精霊信仰の文脈でキリスト教の神を解釈し受容してきた人々が、改宗後世代を重ねていく中で新しく信仰を語る言葉や思考になじんでいった様子を明らかにしたものである。 年度末に予定していた海外渡航による文献収集やフィールド調査は行えなかった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
2018年6月に出産した。加えて、2018年4月から大学の常勤教員として着任し、研究を取り巻く環境が一変した。教育、学務と育児が一気に増えたため、研究に費やす時間の確保がポスドク研究員のころと比べて格段に難しくなり、また、1歳児を抱えての海外渡航による調査は難しいため、調査も十分に行えなくなってしまったことによる。2019年度はさらに年度末の渡航に向けて調整していたがコロナ・ウイルス蔓延により、渡航調査を断念した。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後海外渡航による現地調査はしばらく難しいと思われる。そのため、主には文献資料を用いた研究へと比重を移す。まずは、申請書で挙げていた「聖書の現地語翻訳と魂/精神概念に関する語彙の選択過程についての文献調査」に関する資料の整理・検討を行う。具体的には、アメリカン・バプテストからビルマへ派遣された最初期の宣教師メイソンやウェイドによって行われたカレン語聖書の翻訳と辞書の編纂に関して、英語とカレン語の手持ちの資料を生かし、カレンの魂/精神概念を形成する語彙に着目し、カレン語正書法の確立とカレン語辞書の編纂過程と併せて聖書のカレン語への翻訳における独特の語彙の選択過程について明らかにしていきたい。特にキリスト教への改宗以前のカレン語の用法と比較しながら、翻訳によってどのような西洋的概念をかぶせられ、カレン語の意味範囲が変容していったのかに着目する。 海外渡航が出来ない分、国内外のオンラインによる学会で成果を発表し、投稿論文を執筆する。
|
Causes of Carryover |
妊娠出産により海外渡航による調査ができなかったため。また、その後の育児などにより学会への参加発表も難しかったため。2019年度末に、子どもを連れて短期の海外渡航による調査を行う計画を立てていたが、コロナ・ウイルス蔓延のためそれも実行できなかった。2020年度は、自宅でこれまでに収集した資料を元に学会発表資料を作成し論文を執筆し、研究成果の公表に努める。またコロナ禍の後に、すぐに海外渡航によるフィールド調査ができるように準備を進める。その際に繰越金を使用したい。
|
Research Products
(2 results)