2020 Fiscal Year Research-status Report
プロテスタント・キリスト教の受容を通じたカレンの人間観の変容:魂から精神へ
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18K12605
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Research Institution | Daito Bunka University |
Principal Investigator |
田崎 郁子 大東文化大学, 国際関係学部, 講師 (00760711)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | プロテスタント・キリスト教 / 人間観の変容 / 宣教活動 / 労働 / タイ / ミャンマー / カレン |
Outline of Annual Research Achievements |
海外渡航による現地調査が不可能なため、収集済みの資料を用いた研究を進めた。 1つ目に、タイ国北部ボーケーオ行政区のキリスト教徒カレンの信仰と労働との関係について検討した。特にキリスト教会の影響によって形成された新たな労働規範に基づく換金作物栽培への従事が、人々の教会活動への参与の仕方や信仰実践、世帯内外の社会関係に影響を及ぼしていることを考察した。 2つ目に、タイとミャンマーの文献資料を中心に、キリスト教への改宗以前のカレン語の用法と比較しながら、聖書のカレン語翻訳とその使用によって変化するカレンの人間観について検討した。特に、カレンの人間観の基底をなす「魂」「精神と身体」を意味するカレン語に着目し、翻訳によってどのような西洋的概念をかぶせられ、カレン語の意味範囲が変容していったのかを考察した。 上記2点について、現在投稿論文を執筆中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
2018年の出産、同時に大学の常勤教員として着任したため、育児と学務の負担が大きくなっていた。加えてコロナ禍のため、計画していた子連れでの海外渡航も難しくなり、現地でのフィールド調査は全く進んでいない。大学ではオンライン授業への対応に追われてしまい、研究時間の確保が難しかった。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度も引き続き海外渡航による現地調査は難しいと思われるため、文献資料を用いた研究を進める。昨年度の内容と重複するが、まずは、執筆中の論文を仕上げて投稿する。また、引き続き申請書で挙げていた「聖書の現地語翻訳と魂/精神概念に関する語彙の選択過程についての文献調査」に関する資料の整理・検討を行う。具体的には、英語とカレン語の手持ちの資料を生かし、カレンの魂/精神概念を形成する語彙に着目し、カレン語正書法の確立とカレン語辞書の編纂過程と併せて聖書のカレン語への翻訳における独特の語彙の選択過程について明らかにしていきたい。海外渡航が出来ない分、国内外のオンラインによる学会で成果を発表し、投稿論文を執筆する。
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Causes of Carryover |
妊娠出産により海外渡航による調査ができなかったため。また、その後の育児などにより学会への参加発表も難しかったため。加えて2019年度末以降は、子どもを連れて短期の海外渡航による調査を行う計画を立てていたが、コロナ・ウイルス蔓延のためそれも実行できなかった。また2020年度の学会は全てオンラインで行われ、参加費も出張費も発生しなかった。 2021年度は、自宅でこれまでに収集した資料を元に学会発表資料を作成し論文を執筆し、研究成果の公表に努める。またコロナ禍の後に、すぐに海外渡航によるフィールド調査ができるように準備を進める。海外渡航による調査が再開できるようになった際に、この繰越金を使用したい。
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