2019 Fiscal Year Research-status Report
Anthropological study of resource-getting behaviors among hunter-gatherers in forest of tropical Africa
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18K12611
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Research Institution | National Museum of Ethnology |
Principal Investigator |
彭 宇潔 国立民族学博物館, 学術資源研究開発センター, プロジェクト研究員 (70791218)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 狩猟採集民 / 社会構造 / 資源利用 / 民族関係 / アフリカ熱帯林 / 環境知覚 |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度には8月から9月にかけて約三週間のフィールドワークを実施した。主には1)狩猟採集民バカを対象に、道路沿いでの定住村の成員構成と、採集のための一時的な採集キャンプの成員構成及びそこまでのルートと対象資源の位置を記録した;2)焼畑農耕民ンンジメを対象に、定住村の成員構成、成員たちのほかの親族の居住地、ンジメ語における親族名称及び親族成員の個人名について聞き取り調査によって記録した。 具体的には1)の居住地と成員構成について、定住村では短期から中期での成員構成が固定しているが、長期(十年以上)でみると成員の入れ替えが起きていた。一方で、一時的な採集キャンプでは、構成成員は短期でも流動性が高いが、採集キャンプの位置は数年経ても変わらないことが多いことが明らかになった。 2)の農耕民の社会構造と居住形態に関しては、親族間の居住距離が広がる傾向がみられる。ンジメでは特定の親族が子どもの名づけ親になる慣習があるが、そうした親族間の関係は彼らの居住地や移動先が決められることはない。女性の結婚による移出以外、生業活動(畑や出稼ぎなど)によって居住地が決められるのがほとんどである。また、農耕民は親族間の訪問はバカほど頻繁ではないが、労働力の借用による親族間の移動がよくみられる。 上記の1)のデータをこれまで集めた事例とデータと合わせて、バカの居住形態に関する投稿論文は掲載決定になった。上記の2)で集めた焼畑農耕民の事例をバカのと比較しながら通文化的な分析をした結果を、2020年2月のアメリカ通文化研究学会でポスター発表をした。そうしたデータに基づいて、狩猟採集民と近隣民族との社会的関係と、彼らの同地域での資源利用の実態の相関関係を議論する英文の投稿論文を執筆している。また、環境知覚に関する投稿論文は、映像に基づく行為分析及び参与観察で得た事例の整理が終了して、論文執筆の作業に移行した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2019年度では計画通りに、約3週間のフィールドワークを実施した。また、調査地ではモバイルネット環境が以前よりだいぶ整備されていて、その後日本にいても、細かい事実確認などを調査地の助手と連絡してできた。2年間の現地調査に基づく投稿論文が採択されて、国際学会での発表をおこなった。また、環境知覚に関する調査の成果を、フランスと日本の大学・研究機構が共催する国際ワークショップで発表し、英文で論文を執筆して投稿する予定である。しかし、新型コロナウィルス肺炎の拡大によって、計画された開催はキャンセルされ、新たな開催日程がまだ決められていない。したがって、本研究課題は当初の主要な問題意識に関するデータ収集が計画通りにできたが、成果の発表は計画より遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度(最終年度)は、新型コロナウィルス肺炎の拡大によって、海外調査・海外渡航がほぼ不可能になった。本研究課題の計画では、最終年度はこれまで2年間で集めたデータの再整理と総括を実施することで、海外への渡航は本来必要ではないが、国際ワークショップや国際学会への参加がほぼ不可能になった。その代案はオンライン開催が予想されるが、研究者間の共同作業は予想より遅くなるだろう。また、インターネットを通して現地の助手と連絡しながら、データの補足や事実確認などの作業が依然として必要だと考えられる。しかし、カメルーンの事情によってできなくなる可能性もある。それを防ぐ方法はないが、できるだけ日本での整理・総括作業を早く進めて、現地の助手と連絡を取れるうちに確認するしかない。
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Causes of Carryover |
論文の校閲(日本語)の費用は予想より低かったため、1万3千円程度の残額が生じた。次年度において、ほかの執筆論文の校閲費用に使用する予定である。
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