2020 Fiscal Year Research-status Report
Potentiality for Coexistence Based on Corporeal Experience: A Case Study of Competitive Athletes in Kenya
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18K12612
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
萩原 卓也 京都大学, アフリカ地域研究資料センター, 研究員 (80803220)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | スポーツ / 文化人類学 / 身体 / ケニア / 自転車 / フィールドワーク / 集団 / 共同性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、ケニアの自転車競技選手を対象としたフィールドワークをもとに、たがいに葛藤や嫉妬を抱えつつも共存している集団の在り方を探究することを通して、社会集団の生成とその持続性を論じる研究に貢献することである。 当初の予定では、2020年度は本研究課題の最終年度であった。しかし、2020年度はCOVID-19の影響により、研究計画の変更を大きく迫られた。具体的には、2019年度後半に予定しつつも同じくCOVID-19の影響により2020年度へと延長していた現地フィールド調査を実施できなかったことにくわえ、当初から2020年度に実施予定であった2ヶ月間の補足調査の実現もかなわなかった。そのため、研究期間延長願を申請した。 ただ、現地調査こそ実現しなかったものの、調査に時間を割かなかったぶん、これまでの研究内容を整理・分析することに力を注ぐことができた。そして、その成果を多くの研究会、シンポジウム、学会にて発表することができた。また、それらの一部を論文や総説として発表することもできた。おもな研究成果は以下の通りである。 (1)生業としての自転車競技の側面とそれを支える競技団体の取り組みを分析した。Takuya HAGIWARA. 2021. Using Sport to Move on to the Next Stage of Life: The Case of Young Cyclists in Kenya. In W. Shiino & I. Karusigarira eds., Youth in Struggles: Unemployment, Politics, and Cultures in Contemporary Africa, pp. 187-213.(2)アフリカにおけるスポーツ競技の歴史と、開発援助事業や大衆スポーツの消費動向を含む今後の展望について解説した。田暁潔・萩原卓也. 2020.「第13章グローバル×スポーツ:13-7.アフリカ」間野義之・上野直彦監修『スポーツビジネスの未来2021-2030』pp.468-485.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
ケニアへの渡航がかなわないながらも、申請時の実施計画に沿う形で継続して文献研究をおこないながら、現時点でのデータを整理・分析し、研究成果を積極的に口頭で、および論文で発表してきた。とくにオンラインツールを活用しつつ実施したそれらの発表機会においては、国内外のあらたな人脈を広く築くことができた。さらに、それぞれ異なるテーマが設定された発表機会において、アフリカにおけるスポーツの歴史とアスリートの身体の位置づけ、都市部に生きる若者の生計戦略、アフリカにおけるスポーツ開発援助事業の展開というように、それぞれ異なる文脈において本研究の今後の課題を浮き彫りにすることができた。今後の研究を進めていくうえで、2020年度は非常に有意義な1年となった。 しかしながら、COVID-19で現地フィールド調査を実施することが不可能だったため、それらの課題に応えるためのデータを集めることができていない。そのため、研究全体として進展してはいるものの、進捗状況としては「やや遅れている」と評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
以上の状況から、研究期間の延長を申請した。引き続きCOVID-19の影響は長引くことが予想され、ケニアへの渡航再開がいつになるか不明である。ただ、可能であれば、2021年度後半には、2020年度の発表で得られた課題に応えるために、現地でのフィールドワークを実施する予定である。フィールドワークでは、選手/元選手のライフヒストリーを重点的に収集する。ケニアにおいて自転車競技選手として生きるとはどういうことかを、彼らの生涯の中に位置づけて理解することを試みる。COVID-19の影響によりケニアへの渡航が困難であれば、インタビュー実施のためにオンラインツールの活用を視野にいれる。COVID-19による生活形態の再編のなかで、アスリートもあらたな生活の形を問われている。このような状況下におけるアスリートの身体との向き合い方、およびコミュニティ内外の関係性の構築・維持の様相も射程におさめつつ、最終年度の研究を展開させていきたい。 研究期間の最後には、研究全体を総括し、身体性を基盤とした他者との共存/並存の可能性を探究する。期待される研究成果については、「ケニアにおけるアスリートの競技後の人生設計と人脈の活用」に関する論文を地域研究系の学術誌(『アフリカ研究』など)へ、「他者との共存/並存を可能にする身構え」を扱った論文をスポーツ研究系の学術誌(『スポーツ社会学研究』など)に投稿し、発表する。
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Causes of Carryover |
COVID-19による影響で、2019年度の後半と2020年度中に予定していたケニアでの現地フィールド調査が実施不可能なまま現在に至る。したがって、それらに対して使用予定であった旅費等の経費がそのまま残額として、すなわち次年度使用額として生じている。これらは、2021年度に実施予定のケニアでの現地フィールド調査にかかる旅費等の経費として使用する計画である。
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Research Products
(7 results)