2021 Fiscal Year Research-status Report
Potentiality for Coexistence Based on Corporeal Experience: A Case Study of Competitive Athletes in Kenya
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18K12612
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
萩原 卓也 京都大学, アフリカ地域研究資料センター, 研究員 (80803220)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | スポーツ / 文化人類学 / 身体 / ケニア / 自転車 / 感覚 / 疲労 / 共同性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、ケニアの自転車競技選手を対象としたフィールドワークをもとに、たがいに葛藤や嫉妬を抱えつつも共存している集団の在り方を探究することを通して、社会集団の生成とその持続性を論じる研究に貢献することである。 当初の研究期間を延長し、2021年度は4年目の年度であった。しかし、2020年度に引き続き、2021年度もCOVID-19の影響により、研究計画の変更を大きく迫られた。具体的には、2021年度へと延長していた現地フィールド調査を実施することができなかった。そのため、研究期間再延長願を申請した。 ただ、現地調査こそ実現しなかったものの、その代わりに遠隔でインタビュー調査を実施する環境を整え、オンラインツールを活用しながら現地のインフォーマントにインタビュー調査をおこなうことができた。環境を整えるために、旅費等で使用予定であった予算を使用した。現地に赴いての対面でのインタビューや参与観察と比べると制限はあるものの、遠隔での聞き取り調査で貴重なデータを得ることができた。具体的には、COVID-19によるアスリートの生活形態の再編、そのような状況下におけるアスリートの身体との向き合い方、さらに自転車競技団体のコミュニティ内外の関係性の変容や維持の様相の一部をあきらかにすることができた。 また、現地調査に割く予定だった時間を、アフリカにおける競技スポーツ全般の歴史を文献調査することに充てた。その成果をこれまでの研究内容とあわせて、論文として公刊することができた。歴史的にアフリカの若者に向けられてきたまなざしと、実際に彼らが経験する感覚による集団の形成とその持続性について分析した。<論文> 萩原卓也 2022「身体をめぐるまなざしと感覚を基盤とした集団の形成と成形 ―自転車競技選手として生きるケニアの若者を事例に」『史苑』82(1):135-164.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
COVID-19でケニアでの現地調査を実施することが引き続きかなわないながらも、オンラインツールを活用しながら現地のインフォーマントにインタビュー調査を実施することができた。それにより、研究課題に応えるためのデータを十分ではないながらも一部取得することができた。 また、申請時の実施計画に沿う形で継続して文献研究をおこないながら、現時点でのデータを整理・分析し、研究成果を積極的に口頭および論文で発表することができた。2021年度は、それぞれ異なる文脈において本研究を深めることができた。(1)移動および滞留する身体の感覚から生み出される自転車競技選手のリズミカルな経験世界、(2)現役選手時代に習得した技能の引退後の展開、(3)都市部に生きる若者の生涯における生計戦略という観点から位置づけた自転車競技選手であること/あったことの効果。最終年度となる2022年度に向けて、今後の研究を進めていくうえで、2021年度も非常に実り多き1年となった。 以上の理由から、現地での参与観察を2019年度後半、2020年度および2021年度に実施できていないものの、研究全体としては着実に進展しているため、進捗状況としては「やや遅れている」と評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
以上の状況から、研究期間の再延長願を申請した。2022年度が最終年度となる。引き続きCOVID-19の影響は少なからず長引くことが予想される。ケニアへの渡航再開時期は不明なものの、可能であれば2022年度後半に、安全対策・感染症対策を強く意識しながらフィールドワークを実施する予定である。 フィールドワークでは、オンラインツールを活用した遠隔でのインタビューの延長線上で、選手/元選手のライフヒストリーを重点的に収集する。COVID-19の影響により研究期間が当初の予定である3年間から5年間へと延びた。これは、社会集団の生成とその持続性を論じるという本研究課題の目的からして、プラスに捉えることもできる。自転車競技選手の生活および競技団体の持続性をより長いスパンで分析することが可能となるためである。ケニアにおいて自転車競技選手として生きるとはどういうことかを、生涯と関連づけて理解する助けになる。COVID-19の影響によりケニアへの渡航が引き続き困難であれば、2021年度に環境を整えたオンラインツールを活用し、引き続き遠隔で聞き取り調査を実施していく。 研究期間の最終年度は、研究全体を総括する。期待される研究成果については、(1)「ケニアにおけるアスリートの競技後の人生設計と人脈の活用」に関する論文を地域研究系の学術誌(『アフリカ研究』など)へ、(2)「身体性を基盤とした他者との共存/並存を可能にする身構え」を扱った論文をスポーツ研究系の学術誌(『スポーツ人類學研究』など)へ、(3)「練習で身体を動かす行為とそれに付随する疲労から生まれる感覚がいかに自転車競技選手の経験世界を形づくり、彼らの日常のリズムを形成しているのか」を考察する論考を論文集へ投稿することを予定している。
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Causes of Carryover |
COVID-19による影響で、2019年度の後半と2020年度および2021年度に予定していたケニアでの現地フィールド調査が実施不可能なまま現在に至る。それらの調査に対して使用予定であった旅費等の予算の一部を、遠隔によるオンラインでのインタビュー調査を実施する環境を整えるために支出した。しかし、オンラインによる聞き取り調査はいまだ十分とは言えない。現地調査のために支出予定であった旅費等の予算が次年度使用額として生じている。これを、2022年度に実施予定のケニアでの現地フィールド調査にかかる旅費等の経費として使用する計画である。
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Research Products
(7 results)