2019 Fiscal Year Annual Research Report
Designing Judicial Selection Systems through Modern Challenges in Japan and the United States: Judicial Independence and Democracy
Project/Area Number |
18K12618
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Research Institution | Kanto Gakuin University |
Principal Investigator |
原口 佳誠 関東学院大学, 法学部, 准教授 (40551594)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 司法制度 / 司法の独立 / デュー・プロセス / 公正な裁判 / 国民審査 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、アメリカの裁判官任用制度の研究を引き続き行った。第42回アメリカ法科大学院協会臨床法学教育大会(2019年5月)に参加し、幅広くセッションに参加し、最新の司法制度論、法曹倫理、ならびに法学教育の潮流を確認した。あわせて、裁判官任用制度研究として、スタンフォード大学ロースクールへ訪問、研究者インタビューと資料収集を行った。さらに、同大学の憲法センター主催のシンポジウムならびに各種セミナー(2020年2月)に参加し、合衆国最高裁判所の社会的役割と裁判官論につきディスカッションを行った。また、日本の最高裁判所裁判官選任制度の制度改革について研究を行った。主として文献研究を行い、裁判官任命諮問委員会の制度の導入について、憲法上の問題を探究した。 これらの研究活動を通じて、アメリカの裁判官任用制度の党派化の問題の背景には、政治資金の問題のみならず、アメリカ社会の分極化がひろく存在しており、分極化の影響をさらに紐解く必要性を確認した。現在、合衆国最高裁に係属中のCarney v. Adamsは、州裁判官のイデオロギー的構成とデュー・プロセス(公正な裁判)との関係を問う事件であり、分極化の影響が州裁判官に広く及んでいる証左である。一方、合衆国最高裁をはじめとする連邦最高裁においても、大統領・連邦議会による保守派の裁判官任命が進行し、イデオロギー的分極化と公正な裁判との関係を問う論点が、焦点化しつつある。司法の独立と公正さの意義が問われている。 日本の最高裁の裁判官任用について、イデオロギー的分極化の問題はアメリカのように顕在化していないが、政治部門による影響は徐々に強化されつつある。国民審査の十分な活用、さらに裁判官任用諮問委員会の設置による任命過程の透明化等、検討すべき課題が山積している。司法の独立と公正さを確立するための制度改革が求められている。
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