2020 Fiscal Year Research-status Report
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18K12619
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
粟辻 悠 関西大学, 法学部, 准教授 (50710597)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 模擬弁論 / レトリック / 法廷弁論 / ローマ法 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度において研究発表を行っていたところである、模擬弁論における登場人物の造形とストーリーの形成に関する考察につき、論文として連載を開始した。 古代ローマ世界における模擬弁論教育については、とりわけ具体的な弁論において弁論者によるストーリー形成の自由度が極めて高いことから、そのフィクション性が強調され、法廷での実践に向けた真剣な準備としての意義が軽視されがちであった。 しかし、例えば法廷での弁護活動を行う際に必要であると想定されるところである、自己の代弁する人物の立場にとって有利な弁論を形成する訓練として考えるならば、模擬弁論における登場人物の造形を軸としたストーリーの形成は十分に役立ちうるものである。 現実の争いにおいて事実を認定するという場面でも、認識能力と審理時間に制約がかかる人間の裁判では、勝負を分けるような重要な事実の認定であればあるほど、対立する両者のいずれが自らの主張する事実に整合するストーリーを説得的に提示することができたか、という競争に大きく左右される。現代のようには科学的捜査が進んでおらず、人間の内心に対する経験的な洞察をより一層要求される時代や社会においては、なおのことである。 古代ローマの模擬弁論は、そのような活動のためにある種の型や補助線を提供する訓練として機能しえたのではないかと考えられる。 そして、実際に上記のような評価を妥当としうる史料上の根拠(主としてレトリック文献による)が存在するということもまた、本研究課題における考察の深まりによって、ある程度までは示すことができたと思われる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
前年度の研究報告を基にした論文の連載を開始できた点については順調であったと評価しうるが、コロナ禍によって予定していた研究報告の機会が失われ、本来最終年度であった本研究課題についても、次年度に持ち越さざるを得なくなった。
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Strategy for Future Research Activity |
新型コロナウイルスをめぐる状況の進展次第ではあるが、この間いやおうなしに成熟してきたリモートの諸手段を最大限に活用することにより、本格的な研究報告の機会を設けて、本研究課題にとっての最終的な成果を論文にまとめる段階に入りたいと考える。
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Causes of Carryover |
コロナ禍により、特に出張を伴う研究報告の機会が失われ、研究が予定通りに進展しなかったため。出張の可能性についての社会的な状況を踏まえて臨機応変に対処し、研究計画を可能な範囲で柔軟に変更して研究費を支出したい。
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