2019 Fiscal Year Research-status Report
集合動産担保を活かしうる取引枠組みとは~担保法史と現代実務の横断的研究
Project/Area Number |
18K12620
|
Research Institution | Hannan University |
Principal Investigator |
池田 雄二 阪南大学, 経済学部, 准教授 (50723144)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | 動産担保 / 集合動産 / 倉庫 / 動産質 / 担保史 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題遂行のため創設された担保史研究会(以下本研究会)は2019年7月6日、進化経済学会・制度と統治部会において「担保の歴史的展開~担保制度及び対象資産の変遷の多面的検討」をテーマとする報告を行った。研究代表者個人は「非典型担保の生成と展開」を題目とする報告をした。そして同報告をベースとして『法と経営研究』3号に「所有権移転型担保の生成・展開史が示唆する担保制度設計における視点」を寄稿した。 また我が国では機械や在庫商品を対象とした新たな担保権の法制化が着手されており、早ければ今年秋には民法改正法制審議会に諮問される方針である。そのため学会報告の成果の出版を目指している。出版に向けた研究会を重ね、出版社との交渉も行っている。 本研究会は世界経営史学会(WCBH)今年度大会における上記テーマを内容とするセッション報告に応募し、海外活動にも着手した。 上記活動において研究会全体の活動として、具体的には以下の実績をあげた。担保制度はある時代、ある場所の社会や制度に偶々合致していたために利用されるのであり、ヨリ優れて行くのではない。このような共通理解の下、研究代表者は以下の点を特に指摘した。質入の他に譲渡担保、買戻特約付売買、売渡担保といった3つの非典型担保相当の取引は元寇前後に存在していた。所領の売買質入、譲渡担保相当の取引の禁止に伴い、買戻特約付売買や売渡担保が創出された。近代以後、集合動産担保については倉庫と連携した動産質が多用されたが、現在では譲渡担保が主流である。譲渡担保は被融資者による在庫等の占有留保を可能とする点が利点として強調される。しかしその反面、被融資者による不正の危険も高い。そのため必ずしも利点とは言えない。この問題は古今東西、共通する問題である。むしろ倉庫業と連携した動産質による担保化を再評価すべきであり、その利用を阻害する原因の除去が必要となる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の中間報告にあたる学会報告と論文公表をした。特に、集合動産担保において利用される譲渡担保では、担保権設定者に担保物の占有を留保できる点がメリットとされることが多いが、担保権者の視点からは担保物流出の危険があり、必ずしもメリットとはいえない点を古今東西の歴史から実証できた。またそうした視点から動産質の利用とこれを支えるであろう、倉庫業に対する重要性について理解を深めることができた。これらの点により研究の進捗状況は概ね順調であると評価している。
|
Strategy for Future Research Activity |
次年度は我が国で動産担保が盛んであった近世・近代の展開と特徴、それから動産質による集合動産担保が多用される外国、とりわけフランスについて、我が国の質権と近かった2006年以前の状況把握に取り組みたい。その上で現在進行中の動産担保法制の整備に資する事を意識して、成果公表に繋げて行きたい。
|