2018 Fiscal Year Research-status Report
富の集中がもたらす憲法的価値への影響とその統制の可能性
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18K12627
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
木下 昌彦 神戸大学, 法学研究科, 准教授 (90456096)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 富の集中 / 経済的自由 / 憲法的価値 / 立憲主義 / 比較憲法 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成30年度は、富の集中が憲法的価値に与える影響とその統制可能性について、研究代表者の構想を国内外の研究者に提示、意見交換をすることに努めた。まず、本研究課題においては、経済的自由と憲法的価値との関係が重要なテーマとなっているが、全国憲法研究会春季研究集会において、「職業の自由と自己統治」と題する報告を行い、経済的自由を自己統治という観点から再構成するとともに、経済的拘束からの自由という課題が憲法的意義をもち得ることの問題提起を行った。同報告については、平成31年4月に、「職業の自由と自己統治-ブランダイスが残した一つの可能性」憲法問題30として公表されている。また、平成30年6月には、香港で開催された国際学会である5th Annual Conference of the International Society of Public Law (ICON-S)において、Constructing Democracy and Deconstructing Wealth: An Analysis of the Constitutional Political Economy in Japanと題する報告をおこない、本報告の基本的構想について国際的な意見な意見を求めた。その他、研究の初年度として、関連する文献の把握と収集、読解に努めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
国内外における報告を通じて、本報告における富の集中の憲法的価値に及ぼす影響とその統制というテーマが、国内のみならず、国際的にも強い関心のあるテーマであることが再確認できた。また、同テーマに関する文献の研究も平成30年度は順調に進んだ。
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Strategy for Future Research Activity |
富の集中に対して国家はこれまでどのように対応し、そして、立憲主義はどのような役割を果たしてきたかということは、比較憲法という観点から重要な課題を含んでいることが明らかとなった。現在、民主主義の確立のためには、財産権の保護を重視すべきであるとする見解と、富の平等を重視すべきであるという見解の間で対立があり、国家実践も大きく分かれている。例えば、日本では戦後の改革において農地改革が民主主義を確立するための重要な施策として合憲とされたのに対してインドでは違憲とされている。今後は、日本の歴史を改めて見直すとともに、インドや東欧、南米のケースなど、幅広い国家実践を視野に研究を深めていく予定である。
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Causes of Carryover |
30年度の研究状況に鑑み、30年代において購入すべき書籍の購入は完了したため、次年度使用額が生じた。
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