2020 Fiscal Year Research-status Report
富の集中がもたらす憲法的価値への影響とその統制の可能性
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18K12627
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
木下 昌彦 神戸大学, 法学研究科, 教授 (90456096)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 憲法 / 経済法 / デジタル・プラットフォーム / 表現の自由 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和2年度は、富の集中が憲法的価値に与える影響とその統制の可能性について、特に、独占禁止法や事業法などの経済法との関係に照らして、研究とその発表をおこなった。令和3年5月頃に公表される「デジタル・メディア・プラットフォームの憲法理論」情報法制研究第9号(2021年)は、令和2年度の当該研究課題における研究成果の中心となるものであり、近年台頭しているデジタル・メディア・プラットフォームへの経済的政治的影響力の集中とその統制の憲法的観点からの必要性と限界について論じている。また、「『#検察庁法改正案に抗議します』」の衝撃-芸能事務所への独占禁止法の適用とその民主的意義」は、芸能界における芸能事務所の影響力の集中が芸能人に対する言論抑圧的作用を有していたことを指摘したうえで、芸能事務所に対する近年の規制の意義とさらなる規制の在り方について、検討を加えたものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題は、富の集中が憲法的価値に与える影響とその統制の可能性であるが、令和2年度は、デジタル・メディア・プラットフォームと芸能界という限定された分野であるが、経済的支配力の集中が与える政治的影響、言論活動への影響を分析することができ、また、経済法を通じてその統制の在り方についても検討を加え、研究成果として公表することができた。これは、本研究課題の目的を一部達成するものであり、包括的な理論と分析の提示にあたって大きな橋頭堡となるものである。
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Strategy for Future Research Activity |
令和3年度は、本研究課題における最後の年となるが、これまで分析してきた内容を踏まえて、包括的な分析と理論の提示を行い、とりわけ、英語の査読論文としての公表を予定したい。また、現在、コロナ禍においては、富の不均衡がますます重要な問題となっているが、それが憲法的価値に与える影響と問題解決の可能性についても論じていきたい。
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Causes of Carryover |
コロナ禍により国内および国外への文献調査・学会出席の機会が減ったことにより次年度使用額が生じた。令和3年度は、コロナ禍が収束すれば、令和2年度の実現できなかった文献調査・学会出席を行う予定である。
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