2023 Fiscal Year Annual Research Report
Administrative Procedures and Administrative Litigation in Response to Time Scales: Building a Theory of "Dialogue" among Citizens, the Judicial Branch, and the Executive Branch
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18K12631
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Research Institution | Fukuoka University |
Principal Investigator |
児玉 弘 福岡大学, 公私立大学の部局等, 准教授 (30758058)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 行政法学 / ドイツ行政法学 / 行政行為論 / 行政手続論 / 行政訴訟論 / 行政手続の再開 / 義務付け訴訟 / 法と時間 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究最終年度である令和5年度においても、前年度までに引き続き、個別法ないし個別事案について、法・事実状態の変化があった場合における当該行政活動のあり方について検討を行った。具体的には、以下のとおりである。(1)とりわけ法・事実状態の変化への対応が求められると考えられる都市法・環境法の交錯領域として、大規模公共事業に関係する法制度・裁判例を検討の俎上に載せた。具体的には、諫早湾干拓事業を素材にした。当該事業をめぐっては、開門確定判決(福岡高判平成22年12月6日判時2102号55頁)の強制執行の不許を求めて国が提起した請求異議を認めた福岡高裁判決(福岡高判令和4年3月25日訟月68巻5号377頁)に対する上告を棄却しまた上告申立てを不受理とした最高裁決定(最決令和5年3月2日判例集未搭載)が出された。一般的には、この最高裁決定をもって司法の「ねじれ」が解消したとか、司法判断が統一されたとかといわれている。この一般的な理解が法律学上正当かどうかを措くとしても、しかし、国が確定判決により自らに課された法的義務を履行しないという事態を行政法学ないし行政法理論が従前想定していたとは考えられない。そこで、これらの裁判が行政法学に対して与える理論的影響を検討した。さしあたりの検討の結果として、①諫早湾干拓紛争をめぐる諸裁判における国の訴訟追行はかなり特徴的であること、②従前の行政法学の見地からはこうした訴訟追行を説明することは困難であること、③むしろ説明責任の観点からは、こうした訴訟追行には問題点を指摘できること、が明らかとなった。(2)上記の成果を日本法社会学会および環境法政策学会において発表した。(3)行政法学に関する論文・裁判例を網羅的に回顧し、展望を示す論文の執筆に関与したり、判例評釈をいくつか執筆することによって、個別法の観点から行政法学を再構成する視座を得た。
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