2019 Fiscal Year Research-status Report
違憲審査基準の動態的把握――比例原則との比較に向けて
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18K12635
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Research Institution | Gakushuin University |
Principal Investigator |
村山 健太郎 学習院大学, 法学部, 教授 (50345253)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 違憲審査の基準 / 審査基準 / 合憲性判断基準 / 第1修正 / 二重の基準論 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、合衆国最高裁の諸判例における違憲審査の基準論の展開を検討することで、合衆国の違憲審査の基準論の比較法的特質を明らかにしようとするものである。平成30年度の研究実施状況報告書においては、令和元年度以降、①合衆国における表現の自由条項と違憲審査の基準論の分析、②合衆国における違憲審査の基準とドイツにおける比例原則の関係の分析、③日本における主要な判例・学説における違憲審査の方法の分析をすすめていくことになるとの計画を示していた。 令和元年度は、「二重の基準論の現在」と「司法と政治の距離」と題する論文の公表が、最大の成果といえる。「二重の基準論の現在」は、上記①~③の課題について、全体的な理解を示そうとしたものである。「司法と政治の距離」は、上記①~③の課題の前提にある、合衆国における司法と政治の関係を論じたものである。 「二重の基準論の現在」においては、①違憲審査の基準のカテゴリー数と②審査基準と合憲性判断基準の区別という観点から、日米独の違憲審査の基準論を比較した。そこで得られた結論は、カテゴリーへの正確な包摂自体のもたらす誤判の可能性と、カテゴリーへの包摂作業を誤る可能性の両者を勘案して、違憲審査の基準のカテゴリー数が決せられる必要があるというものである。 「司法と政治の距離」は、カバノー裁判官の合衆国最高裁判所判事の任命過程を素材として、合衆国における司法と政治の相剋を記述したものであり、違憲審査の基準を導出する主体である合衆国最高裁の法的でありながら政治的でもある性格を描出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成30年度の研究実施状況報告書においては、令和元年度以降、①合衆国における表現の自由条項と違憲審査の基準論の分析、②合衆国における違憲審査の基準とドイツにおける比例原則の関係の分析、③日本における主要な判例・学説における違憲審査の方法の分析をすすめていくことになるとの計画を示していた。 一方で、令和元年度の成果は、当初の計画以上に進展している。第1に、上記①~③について、全体的な理解を示すことができた。第2に、違憲審査の基準を導出する主体である合衆国最高裁の性格についても検討することができた。 他方で、令和元年度の成果には、やや遅れている部分もある。すなわち、上記①~③の検討は総論的なものであり、個別の法分野ごとの各論的な考察を十分に深めることができなかった。各論的検討は、次年度以降の課題となる。 以上のような理由から、研究の全体的な状況としては、おおむね順調に進展していると評価することができる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究では、①全体的な理解を示すことができた違憲審査の基準論について各論的な検討を行うとともに、②違憲審査の基準論の総論についても分析を深めていきたい。 ①については、第1修正分野を中心としつつも、第14修正分野も視野に入れて、両分野の交錯領域である選挙法についての合衆国最高裁の議論を検討しようと考えている。②については、合衆国のみならず日本における先行業績の検討も充実させることを考えている。
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Causes of Carryover |
本年度の研究に必要な書籍の選別が年度末時点で完結しなかったため、若干の次年度使用額が生じた。本年度残額については、次年度支出分とあわせて、書籍等必要な物品の購入費用や、出張経費として利用する。
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