2018 Fiscal Year Research-status Report
19世紀の日仏における大学制度の改革と憲法学の社会的意義
Project/Area Number |
18K12636
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
春山 習 早稲田大学, 法学学術院, 助教 (50780201)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 憲法学 / フランス第三共和制 / 大学 / 歴史 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は「ディシプリンとしての憲法学」という観点から、大学制度と憲法学という学問それ自体との関連性を重視し、フランス第三共和制期における憲法学の誕生、展開、変容を研究した。樋口陽一、高橋和之らの先行研究に対し、本稿は、ギョーム・サクリストをはじめとするフランスでの最新の研究をもとに、いわば知識社会学的アプローチを取り入れ、その観点から学説をとらえ直すことを試みた。 その観点からすれば、19世紀前半における大学制度の創設と後半におけるその改革によって法学部が変質したことが極めて重要である。なぜなら、民法典の習得とローマ法の知識を基礎とした法曹養成に特化した職業訓練校から、経済学や社会学などの実証科学を取り入れ、法学内部での分化と専門性を高めた、法曹養成に限定されない近代的大学への転換という背景が憲法学の学問としての性格に影響を与えたからである。 特に着目した点は19世紀にパリ大学で活躍した公法学者フェルディナン・ラルノードの公法学に関する言説である。ラルノードの言説は以上の事情を裏付けている。ラルノードによれば公法学とは、民法学のような伝統的かつ狭義の法学ではなく、国家を対象とする新たな学問である。法典を対象とした帰納と演繹の学ではなく、比較法と歴史的方法を用いた政治経済学的な学問として公法学は構想されていた。ラルノードはそうした学問潮流が当時のフランスの法学部の重要な要素であると認識し、そのような学問をより盛り立てていくべきだと主張していた。そして後にパリ大学法学部長となり、大学改革を進めていったのである。来年度はこの研究成果を論文として発表することを目指し、さらなる研究の深化をはかる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
博士論文以降、フランスの大学制度について研究を進めることができたから。
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Strategy for Future Research Activity |
さらにフランスの大学制度について研究し、論文として公表することを目標とする。
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