2019 Fiscal Year Research-status Report
19世紀の日仏における大学制度の改革と憲法学の社会的意義
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18K12636
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
春山 習 早稲田大学, 法学学術院, その他(招聘研究員) (50780201)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 主権 / 憲法制定権力 / シィエス / 統治 / フランス |
Outline of Annual Research Achievements |
引き続き、フランスにおける大学および学問の社会的な位置づけを研究する前提として、フランスの基礎概念や重要な思想家の歴史的背景を中心に研究した。その成果として、前年度に発表した論文の続編である「主権と統治(2・完)」(早稲田法学94巻2号)を発表した。ここでは「主権」および「統治」というフランスにおける重要概念の歴史を、ボダン、ルソーなどに遡り、憲法学にどのように取り入れられていったのかを研究した。そこでは主権を従来のように国家権力の総体として捉えるのではなく、憲法制定権力として捉える可能性を提示した。それに伴い、ナシオン主権とプープル主権の分類はフランス革命とルソー理論の極めて特殊な一解釈に過ぎず、伝統的なフランス法学は主権を憲法制定権力として理解し、立憲主義的な把握を試みようとしてきたことを明らかにし、従来主権として理解されてきた国家権力は統治の領域として別に観念することができると論じた。 また、その関心からさらに研究を進め、「シィエスの憲法思想の再検討」(早稲田法学94巻4号)を発表した。シィエスの学問的基礎である経済学理論に着目し、ディシプリンの観点からシィエスの構想した政治理論を再構築しようとしたものである。従来の通説を最新の研究を参考に批判的に検討し、とりわけナシオン・プープル二分論に基づく分析視角がシィエスのテクストに根拠を持たないものであることを示した。そのほか、主権や憲法制定権力といった基礎理論と、後の学問に与えた影響という観点から研究を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
18世紀の思想を研究するにあたり、予想以上に時間がかかり、19世紀の憲法学という本格的な検討の前提までしか検討できていないため。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、18世紀から19世紀にかけての基礎理論が憲法学に果たした役割と、それがディシプリンとしての憲法学をどのように形成したのかという観点から研究を行う予定である。また、日本の大学史および憲法学の歴史との比較研究にも着手するつもりである。
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Causes of Carryover |
次年度にパソコンやプリンタなど比較的高額な物品を購入する予定のため。
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