2022 Fiscal Year Annual Research Report
Social Significance of The Reform of University Systems and Constitutional Law in 19th Century Japan and France
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18K12636
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Research Institution | Asia University |
Principal Investigator |
春山 習 亜細亜大学, 法学部, 講師 (50780201)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 憲法史 / 比較憲法 |
Outline of Annual Research Achievements |
フランスにおける憲法学のあり方と社会状況の関連について、主に19世紀を対象とする雑誌に掲載された論文を中心に分析した。共和国としてのフランスが確立しつつあり、立法府の権力が強調された時代においては、立法は確かに大きな役割を果たしたものの、その意義が理解され、かつその先の展望が与えられるためには、法学部の教授たちの理論化が求められた。そして法学教育も、大学の外からの要請に応じて変化しつつあった。一つは、共和制という政治制度に基づく要請である。共和制を支えるための政治家、法律家の養成と共に、国民主権を担うための市民という新たなイメージに基づく国民の教育が必要とされた。もっとも、実際には、官僚や法律家の養成が念頭に置かれており、市民という理念はさほど強調されなかったようである。もう一つは、経済界からの要請である。資本主義が発達するにつれて、従来の放任主義に近い自由主義体制を維持することが困難になった。この要請は、主に行政法や民法に強く妥当し、さらには産業法などの新たな法分野を生み出すに至った。憲法学に対してもこの要請は及び、資本主義化した社会を前提に、言い換えれば、国家からある程度自律した「社会」なるものの存在を前提に、国家論を構成する必要が生じた。フランソワ・エヴァルドの『福祉国家』が描くのはそうしたパラダイムの転換であるが、法律論においても、デュギやオーリウのように、「社会」を基軸とする理論が登場した。もっとも、主流の憲法学は、社会の存在をある程度認めながらも、それは社会学の任務であるとし、法律学としては国家の立法権を強調し、国家が社会に介入する権限を当然のものとして認める構成が採用された。
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