2019 Fiscal Year Research-status Report
アラブ世界の国際法受容に対しシリア・レバノン系知識人が果たした役割についての研究
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18K12645
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
沖 祐太郎 九州大学, 法学研究院, 講師 (90737579)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 国際法の受容 / シリア・レバノン / アラビア語国際法学 / 移民 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、イスラーム世界における国際法受容過程の研究の一環として、国際法の主要概念のアラビア語への翻訳がどのように進められたのかを実証的に検討するものであり、特に焦点を当てるのは、1890年代から1920年代にかけて、シリア・レバノン系知識人によってアラビア語で著された国際法関連の諸著作である。本年度はまず、昨年度に引き続き本研究が対象とする期間中である 1900年に出版されたアミーン・アルスラーンの『諸国民の法と国際条約』という著作に対して検討を進めている。さらに本書の検討にあたって、同じくシリア・レバノン系の移民が関わって作成された別の2つの国際法関係資料、そしてエジプトで同時期に出版されている系譜を異にするアラビア語著作との比較を行っている。具体的にはハサン・フェフミ―(著)ヤヒヤー・カドリー他(訳)『国際法』(1894年)と19世紀末から20世紀初頭にかけて複数出版されているユースフ・ハマーム・アースアーフが編集していた条約集である。この比較の作業によって、アルスラーンの著作が依拠したヨーロッパ国際法学の特徴、その選択の意義についての考察が進みつつある。以上の成果については2020年度中に日本中東学会などで報告し、論文としてまとめる予定である。また、アミーン・アルスラーン自身については、在ブリュッセル・オスマン帝国総領事であった時期の関連公文書やアルゼンチン移住後の出版活動ならびに政治活動に注目した先行研究等を発見し入手したため、これらの分析も進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
2019年度末に数か月の期間で予定していた海外調査がコロナ禍によって実施できなかった。そのため、研究期間全体で必要としている調査研究が実施できておらず、それによる遅れが生じている。
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Strategy for Future Research Activity |
海外渡航が困難になっていることから、手持ちの資料、そしてインターネット等で取り寄せなどが可能な資料による資料の分析に注力する。しかし、現地調査によらなければならない部分も少なくないため、研究期間の延長も検討している。
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Causes of Carryover |
合計2か月弱を予定した中東と南米への海外渡航、調査が実施できなかったため次年度使用額が生じた。次年度においては、海外渡航が可能になり次第の旅費として本年度使用額を用いたいと考えている。
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