2020 Fiscal Year Research-status Report
アラブ世界の国際法受容に対しシリア・レバノン系知識人が果たした役割についての研究
Project/Area Number |
18K12645
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
沖 祐太郎 九州大学, 法学研究院, 専門研究員 (90737579)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 国際法の受容 / シリア・レバノン / アラビア語国際法学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、1890年代から1920年代にかけてシリア・レバノン系の移民によって著された国際法関連著作の執筆状況の全体像とその特徴の解明を目指したものである。2020年度はシリア、レバノン、あるいは彼らが多く移民しており、またアラビア語やスペイン語での国際法関連の執筆活動が盛んに行われていたことが確認できるアルゼンチン等において出版された著作を調査・収集・検討する予定であった。しかしながら、新型コロナウイルスの流行によりこうした地域での調査活動はもちろん、代替的な調査地と考えていたエジプトやイギリス、アメリカ等での調査を実行することも困難となった。また、エジプトにおいて出版された体系的な国際法学の著作であるアリー・マーヒルや彼に関連する著作をエジプトにおいて収集し、比較分析する予定であったが、それも困難となった。そこで、次善の策として既に収集が完了している書籍群を資料として、国際法の主要概念のうち「戦争」および「捕虜」、さらには「中立」に関する検討を行なった。当初の予定とはやや異なる資料状況での作業となったが、各著作が典拠としているヨーロッパ国際法学のテキストとの接続・切断関係、すなわち取捨選択関係に着目して、各著作の特徴、ひいては国際法学の知識の広がり方の特徴を明らかにすることを試みている。 さらに、やや現代へと検討対象を移し、シリア・レバノン系の知識人が、後の時代に記述した国際法関連の著作、特にイスラーム法と国際法の関係に注目したような著作に注目して検討を行った。この検討結果は、国際法学にとって有する意義との観点から取りまとめ、国際法学の学会誌(『世界法年報』)に投稿し、公表された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
シリア、レバノン、エジプト、そしてアルゼンチンなどでの資料調査が行えなくなったことから大幅な計画変更を余儀なくされた。資料調査にかわる代替的な方法が見出せなかったため、既存の資料に基づく研究を進めることとした。
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Strategy for Future Research Activity |
新型コロナウイルスの流行終息は見通せないものと想定し、現地での資料調査は2021年度後半の実施可能性には期待しつつも、基本的には既存資料でできる限りの分析を進めていく。
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Causes of Carryover |
当初予定していた、海外(レバノン、エジプト、アルゼンチン等)での資料調査が完全に不可能になったため、次年度使用額が生じた。次年度においては、後半において渡航できる可能性に期待しつつも、オンライン書店や現地の書店、現地の研究者などと連絡を取りつつ、資料の収集を図る。
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Research Products
(3 results)