2018 Fiscal Year Research-status Report
労働契約規制の新たな理念と労働契約概念の再構成に関する比較法研究
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18K12653
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Research Institution | The University of Kitakyushu |
Principal Investigator |
石田 信平 北九州市立大学, 法学部, 准教授 (20506513)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 労働契約 / イギリス法 / 労働者概念 / Workers / 心理的従属性 / 潜在能力アプローチ |
Outline of Annual Research Achievements |
2018年度は、本研究課題の研究計画にそくして、イギリス労働法のWorker概念に関する裁判例・審判例・学説について詳細な文献研究を行った。①就労の非代替性を基軸とするWorker概念が1831年の現物支給禁止法の解釈から生じてきたことについて検討を加えるとともに、②イギリス労働法の適用範囲を画するWorker概念は、雇用権利法(Employment Rights Act 1996)、雇用差別禁止法(Equality Act 2010)、労働組合・労使関係法(Trade Union and Labour Relations (Consolidation) Act 1992)にそれぞれ定義され、それらが異なる歴史的文脈において形成されてきたことについて考察した。また、③裁判例・審判例における近時のWorker該当性判断では、支配的目的テスト、従属性テスト、統合テストのいずれによるべきかが問題となっていることを明らかにし、これらに加えて、④派遣就労者、ギグエコノミー、ゼロ時間契約におけるWorker該当性をめぐる争いについても検討を加えた。さらに、⑤Worker該当性の判断基準を就労の非代替性に求めることを主張し、その根拠として、就労における人格性(personality in work)という新たな規範的基礎を提起する学説について検討を行い、また、⑥労働法の新たな適用範囲を社会的・心理的従属性に求めるべきであるとする学説についても考察を加えた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究課題の研究開始以前の前段階の準備を十分に行うことができていたため、季刊労働法262号、263号(イギリス労働法のWorker概念(1)(2・完)に、本研究課題の核心的課題に関する研究成果を公表することができた。当初の計画以上に研究課題に関する検討をすすめることができている。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度は、イギリスにおける使用者概念の文献研究を進める。使用者の実質的機能に照らして部分的な使用者性を肯定する新たな見解に焦点を当てつつ、裁判例や学説の展開について分析を加えることとしたい。
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Causes of Carryover |
北九州市立大学から専修大学への所属変更に伴い、北九州市立大学の研究費で購入したPCやタブレットを返却したため、研究を間断なく遂行するために必要な新たなPCやタブレットを事前に購入する必要性が生じた。
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