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2018 Fiscal Year Research-status Report

公判外供述の証拠使用の場面における証人審問権の役割に関する研究

Research Project

Project/Area Number 18K12656
Research InstitutionTohoku University

Principal Investigator

大谷 祐毅  東北大学, 法学研究科, 准教授 (80707498)

Project Period (FY) 2018-04-01 – 2022-03-31
Keywords証人審問権 / 伝聞法則 / 刑事証拠法 / 英米証拠法
Outline of Annual Research Achievements

平成30年度には,近時新たに公表された資料等を含めて憲法37条2項前段及び刑事訴訟法の伝聞法則関連規定の沿革の調査・検討を行い,当時,わが国で,公判外供述の証拠使用の場面において証人審問権がどのような役割を果たすものと理解されていたかを探求した。特に,憲法37条2項前段にいう「すべての証人」の意義を「裁判所の職権により,又は訴訟当事者の請求により喚問した証人」と形式的に解する理解について,憲法制定過程にその有力な根拠があると考えられるところ,刑訴法320条以下の制定過程に関する資料からすれば,公判外供述の証拠使用について憲法37条2項前段の保障,あるいは少なくともその「精神」ないし「趣旨」が及び,公判外供述の証拠使用が一定程度制限されるべきとの理解は,当時から存在していたことが確認でき,憲法公布時点において,憲法37条2項前段にいう「すべての証人」について異なる憲法解釈が存在し,その憲法解釈に依拠して刑訴法は制定されたことが確認できる。
また,平成30年度には,欧州人権裁判所判例及び欧州各国内法並びにアメリカ法について,各法域における公判外供述の証拠使用に関する規律の在り方を概観しつつ,Crawford判決以降のアメリカにおける議論状況の分析を行った。Crawford判決は,連邦憲法第6修正の対面条項が伝聞法則と別個に規律を及ぼし得る余地が事実上ほとんど存在しなかった従前の枠組みを大きく変更し,伝聞法則とは別個に同条項による厳格な規律が及ぶとした判決である。ここでは,「対面条項の目的は証拠の信頼性の確保にある」とされつつ,「それは実体的な保障ではなく手続的な保障である」とされており,供述証拠の信頼性確保の意義について重要な示唆を含んでいる。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

本研究課題は,①証人審問権が保護する本質的な「価値」は何か,②証人審問権による規律は伝聞法則による規律とどのような関係に立つか,という点を解明することを主たる目的としている。平成30年度には,その目的達成のため,沿革的検討及び比較法的検討の準備作業並びにアメリカ法の検討の一部を計画し,それらを実施することができた。
今年度の研究成果は,右の目的との関係では次のような意味を持つ。
沿革的検討からは,憲法37条2項前段にいう「すべての証人」の意義について形式的な理解を採用すべき必然性はなく,公判外供述の証拠使用について憲法37条2項前段の保障,あるいは少なくともその「精神」ないし「趣旨」が及び,公判外供述の証拠使用が一定程度制限されるべきとの理解の基礎付けも十分にあり得ることが確認でき,この点は,①②の目的達成のための十分な基礎を提供している。
比較法的検討,特にアメリカ法の検討からは,Crawford判決において,伝聞法則とは別個に公判外供述の証拠使用に厳格な規律を及ぼすとされた対面条項について,供述証拠の信頼性の確保をその趣旨としつつ,それを「手続的な保障」として捉えるという,必ずしも従来十分に意識されていたかったと思われる証人審問権の趣旨理解の可能性が示唆され,①②の目的達成に有用な知見を獲得することができた。
以上の通り,今年度の研究成果は2つの目的に対して重要な貢献をするものであるので,上記の自己評価をした。

Strategy for Future Research Activity

今後も引き続き研究課題について比較法的検討を行っていく予定である。令和元年度には,引き続きアメリカ法についての検討を中心とする予定であるが,以降は,そこで得られた知見を基に,欧州人権裁判所判例及び欧州各国内法(イギリス,ドイツ及びフランス)の検討も順次行う予定である。
また,令和元年度又は2年度には,一定程度比較法的検討の十分な知見を獲得できた段階で,さらにそれを深めるため,アメリカ・イギリス・ドイツにおける資料収集・現地調査を実施する予定である。

Causes of Carryover

平成30年度の途中で独立基盤形成支援による追加配分の交付を受けたため,当初予定していた資料収集等を実施しつつ,研究の基盤となる機器の充実を図ってもなお,次年度使用額が生じることとなった。追加配分の交付を受けたことによって,次年度以降に刊行の予定されている外国書籍等の購入,次年度以降に予定している現地調査等の拡充を併せて計画したことも,次年度使用額が生じたことの理由である。
次年度は,アメリカ・イギリス・ドイツ・フランスにおける公判外供述の証拠使用の場面における規律を検討するため,各国の証拠法関連図書を20-30万円ずつ程度購入する(100万円程度)。他方,日本における関連する議論の最新動向を把握するため,日本の証拠法関連図書も30万円程度購入する。また,次年度以降,比較法的検討について一定程度十分な知見を獲得できた段階でアメリカ及び欧州における資料収集・現地調査を予定しており,この出張旅費等として50万円程度を予定している。

  • Research Products

    (1 results)

All 2019

All Journal Article (1 results)

  • [Journal Article] 刑事裁判における公判外供述の証拠使用と証人を審問する権利の役割(1)2019

    • Author(s)
      大谷祐毅
    • Journal Title

      法学協会雑誌

      Volume: 136巻2号 Pages: 293-374

URL: 

Published: 2019-12-27  

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