2018 Fiscal Year Research-status Report
被疑者供述の獲得・使用に対する法的規制――自白法則の歴史的・比較法的検討
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18K12658
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
川島 享祐 千葉大学, 大学院社会科学研究院, 准教授 (90734674)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 自白法則 / 証拠法 / 取調べ / 任意性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は,①自白法則がいかなる理論的構造を有しているのか,及び,②いかなる判断基準の下で自白の証拠能力が判断されるのか,という問題を主たる検討対象とするものである。平成30年度には,主として①の検討を行ったが,下記のとおり,おおむね計画どおりに研究を進めることができた。 平成30年度の前半には,まず,明治以来の刑事訴訟法(治罪法,明治刑事訴訟法,大正刑事訴訟法)の下において,自白に対していかなる証拠法的規制がなされていたのかを検討し,その法的規制の下でいわゆる人権蹂躙問題が生じた理由を検討した。また,現行憲法及び現行刑訴法の制定過程を検討し,現行法が定める自白法則の元来の制定理由が,戦前の人権蹂躙問題に対する反省の下,拷問等の人権蹂躙行為によって獲得された自白を証拠から排除する点にあるという知見を得た。さらに,自白法則の理論的構造に関する現行法下における議論の経過を分析し,いわゆる虚偽排除説,人権擁護説,違法排除説に対して,上記の知見を踏まえた理論的検討を加えた。 平成30年度の後半には,上記の成果の一部を公表するとともに,イギリスで自白法則が成立したとされる18世紀から1984年警察・刑事証拠法(PACE)が制定されるまでの時期を検討した。その際には,近時有力なイギリス法制史の知見等を参照するとともに,18世紀以来の判例・学説を検討することで,イギリスにおいて自白法則の主たる理論的根拠とされている信頼性原理の内実に関して理論的な分析を加えた。この成果は,来年度以降に公表する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「研究業績の概要」欄で述べたように,おおむね当初の計画どおりに調査・研究を進めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き国内外の文献の収集を行うとともに,陪審制を採用するイギリス及びアメリカにおいて,裁判傍聴や現地法曹へのインタビュー等を実施する予定である。
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Causes of Carryover |
当初交付額についてはほぼ計画どおりに支出したが,「若手研究における独立基盤形成支援(試行)」の採択に伴う変更交付決定による追加交付額に関しては,研究基盤整備経費の総額のうち研究機関による支援を受けた分を優先的に執行したため,残余が生じた。残余分については,引き続き,研究基盤整備の目的である法学資料室の整備等のために用いる予定である。
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