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2018 Fiscal Year Research-status Report

証拠開示制度の実効性を支える諸方策と当事者主義-米国諸法域の法制の比較研究-

Research Project

Project/Area Number 18K12663
Research InstitutionUniversity of the Ryukyus

Principal Investigator

三明 翔  琉球大学, 法務研究科, 准教授 (60635176)

Project Period (FY) 2018-04-01 – 2021-03-31
Keywords証拠開示 / 刑事訴訟法 / 当事者主義 / 検察官 / アメリカ合衆国
Outline of Annual Research Achievements

わが国の証拠開示法制は平成16年の公判前整理手続の導入により大幅に拡充・整備されたが、その解釈・運用等においては、①求められる証拠開示が遺漏なく実効的に実施されるためにはいかなる方策や運用が必要か、また、②検察官による証拠開示と当事者主義の関係をいかに理解すべきかなど、検討を要する課題が生じてきている。本研究は、当事者主義の訴訟構造や、刑事被告人に保障される憲法上の権利など、刑事手続に関する価値の多くを共有するアメリカ合衆国の諸法域(連邦・州)の証拠開示等の法制を比較することを通じ、上記①②の課題等に関し示唆を得ようとするものである。
2018年度は計画初年度であり、予定通り、合衆国の連邦と諸州における証拠開示法制と近年の動向、また当事者主義の下における検察官の役割・責務に対する合衆国と我が国の近年の理解について、文献を中心とした調査・研究を行った。予備的調査から窺われた通り、全米の証拠開示制度にはいくつかの型があり、また一部の法域では、被告人に対するかなり広範な証拠開示を志向する法域が現れていることが明らかになった。検察官の責務に関しては、検察官は、訴訟の通常の当事者とは異なって事実解明や無辜の不処罰等に公的責任を有すると理解するのが日米ともに伝統的だが、合衆国の議論では、当事者主義に由来する一定の限度を窺わせるものもみられ、より掘り下げた分析の必要が認められた。
なおアメリカ合衆国では、合衆国憲法のデュー・プロセス条項の解釈として、検察官は被告人に有利で重要な証拠を開示する義務があるとする判例法理が確立しているが、近年、合衆国最高裁が同法理を具体的事案に適用してみせる事例が相次いだ。同法理は連邦・州のいずれも拘束するものであり、合衆国の証拠開示法制の分析上重要であることから、これらについては研究会報告・評釈を行った。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

2018年度は計画していた通り、文献の収集・分析を行うことができ、それを通じて研究の方向性がより明確になった。未だ収集できていない資料や、分析の途上にある事項は少なくないが、次年度に予定している現地調査を活用しつつ対処することができると考える。
また当初の計画では予定していなかったものの、近年の合衆国最高裁判例の分析の結果、事例判断ではあるが一定の意義があると考え、それらについて研究会で報告を行ったほか、判例評釈1本を執筆した。
当初の計画では2018年度中にも先行の現地調査を行う可能性に言及していたが、これは実施しなかった。とはいえ、合衆国の研究者と交流・意見交換を行っており、2019年度の現地調査の目処を立てることができた。2019年度に集中的に現地調査を行い、また必要に応じて2020年度に補充的な現地調査を行うことで、研究課題に必要な調査は遂げることができると見込んでいる。

Strategy for Future Research Activity

2019年度は、研究計画の通り、アメリカ合衆国に実際に赴いて現地調査を行う予定である。現時点で現地調査先と決めているのはハワイ州である。ハワイ大学ロースクールには、ハワイ州のイノセンスプロジェクトのディレクターでもある刑事法専攻の教授がおられ、同教授に対するインタビュー等からは、証拠の不開示が生じるメカニズム、類型、必要な対策等について強い示唆が得られると期待される。さらに現地では、連邦・州の検察官にもアプローチし、検察官は、憲法上被告人に有利で重要な証拠の開示義務を負っているにも拘らず、証拠の不開示が誤判の大きな原因の一つとなっている現状をどう考えるか、証拠の開示漏れが生じないようにするためのポリシーの策定・公開など何らかの取り組みをしているか、一部の州で採用されている広範な証拠開示の制度をどう評価するか、検察官として、一方当事者としての地位と国の代理人として公的責任を負う者としての地位の両立に困難を感じるか、訴追者としてのバイアスの払拭は可能かといった事項について訴追側実務家の認識を明らかにしたい。さらにハワイは合衆国で最もリベラルな州の一つとして知られるが、証拠開示法制については、一部の州でみられるような先駆的な法制は必ずしも採用していない。それが実務の運用が巧みでその必要がないためなのか、あるいは大きな改革を妨げる事情があるのかといった点に焦点を合わせ、州議会や研究者の議論を調査する予定である。

Causes of Carryover

2018年度に次年度使用額が生じた理由は、独立基盤形成支援による追加分の交付金を当該年度中に使用し切れなかったこと、及び、2018年度は当初研究計画に予定し、費用が大きくかかると見込まれた現地調査を見送ったことにある。
2019年度は2018年度の文献等調査を基に集中的に現地調査を行う予定であり、次年度使用額は主にその旅費に充当する予定である。

  • Research Products

    (1 results)

All 2018

All Journal Article (1 results)

  • [Journal Article] Wearry v. Cain, 136 S.Ct. 1002 (2016)2018

    • Author(s)
      三明翔
    • Journal Title

      比較法雑誌

      Volume: 52 Pages: 243-254

URL: 

Published: 2019-12-27  

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