2019 Fiscal Year Research-status Report
人工延命措置の差控え・中止をめぐる三種類の意思表示とこれに応じた制度構築
Project/Area Number |
18K12668
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Research Institution | Japan Coast Guard Academy (Center for Research in International Marine Policy) |
Principal Investigator |
新谷 一朗 海上保安大学校(国際海洋政策研究センター), 国際海洋政策研究センター, 准教授 (40532677)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 尊厳死 / 終末期医療 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,人工延命措置を拒否するための意思表示としては,①信頼に値する者を選任する,②事前に文書を作成しそれを解釈する者を選任する,③医師との協議のもとで文書を作成する,という三種類が考えられるところ,このための制度構築を対象としている。 二年目にあたる平成31年度(令和元年度)は,医療従事者の手続的保護という観点からのアメリカの法制度を分析することとしていた。具体的には,アメリカの各州の法制度に関する資料を収集・分析し,これらをもとに,医療者の手続的保護という要素を抽出するものである。 この点,アメリカにおいては,すべての州で人工延命措置の差控え・中止の正当化に関する立法が整備されているところ,これらの諸立法における「医療者の手続的保護」という要素を丹念に抽出するした。それぞれの立法に従った手続きを履践することで,医療従事者の免責を認める立法が通常であり,これは刑事のみならず民事も含まれる。医療従事者のみならず,その他の意思決定への関与者への免責を保障している規定の存在も確認できた。そして,これらの立法が,形式的な免責を意図するものではなく,アメリカの諸立法においては患者の自己決定権をないがしろにすることなく,むしろこれを限りなく可能なかたちで実現することが企図されている。これらの分析結果とあわせて,わが国の人工延命措置の拒否をめぐる議論の歴史と現状の課題,そしてこれらに対する分析を,世界医事法学会において,個別報告を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
アメリカの議論を抽出して学会で報告する所期の目的は達成できているが,初年度に予定していたドイツの議論をフォローすることの遅れを取り戻すことができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度の遅れを取り戻すべく,ドイツ刑法学における患者の事前指示の位置づけを今一度分析し,これと二年目の成果を合わせることで,最終的な提言を行うこととする。
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Causes of Carryover |
参加を予定していた学会に,事情により参加できなったため当該研究費が生じた。本年度の研究においても,ドイツ語法律データベースに15万円程度,図書の購入費に25万円程度,学会・研究会への旅費として,10万円程度を充てる。
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