2020 Fiscal Year Research-status Report
人工延命措置の差控え・中止をめぐる三種類の意思表示とこれに応じた制度構築
Project/Area Number |
18K12668
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Research Institution | Japan Coast Guard Academy (Center for Research in International Marine Policy) |
Principal Investigator |
新谷 一朗 海上保安大学校(国際海洋政策研究センター), 国際海洋政策研究センター, 准教授 (40532677)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 終末期医療 / 医事刑法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,人工延命措置を拒否する状況で患者本人の「自己決定」たりうる意思表示として,①信頼に値する代行者の選任,②文書の作成とそれを具体的に解釈する者の選任,そして③将来の病状を医師と話し合ったうえでの文書の作成,という三種類の意思表示があり得るところ,このための制度構築を対象としている。 三年目にあたる令和2年度は,これまでのドイツおよびアメリカにおける議論に対する分析結果を基に,その中で日本法に応用できる部分を抽出・調整したうえで,この問題を解決するために望ましい法制度,すなわち,上記三種類の意思表示を基軸として人工延命措置の差控え・中止を正当化するための法制度の試論を展開する予定であった。 しかしながら,二年目で行う予定であったアメリカの諸立法に対する分析において,手続きと医療従事者の免責の問題への分析のみならず,人工的水分・栄養補給法も他の医療行為と区別せずに拒否可能なのか,そこには特別な配慮が必要なのではないか,という議論と,「最善の利益」という文言が各立法においてどのように定義され,運用されているのか,という論点を検討する必要性を感じた。 そこで研究計画を一年延長したうえで,当初の目的であった日本法に応用できる部分をより深化させる目的で,上記二つの論点への分析に費やし,前者については1980年代後半の議論を検討したうえで,人工的水分・栄養補給法については特別な立法措置を講じている州が多く存在していることを確認し,最善の利益という概念への分析を通じて,双方の論点とも各々論文として公表する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
二年目におけるアメリカ法への分析において,更に深化させるべき2つの論点があると考えたため,三年目に予定していた日本法への展開は研究計画を延長して四年目に行うこととして,三年目には当該2つの論点への検討を行ったため。
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Strategy for Future Research Activity |
当初,三年目で予定していたように,これまでのドイツおよびアメリカにおける議論に対する分析結果を基に,その中で日本法に応用できる部分を抽出・調整したうえで,この問題を解決するために望ましい法制度,すなわち,上記三種類の意思表示を基軸として人工延命措置の差控え・中止を正当化するための法制度の試論を展開する予定である。
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Causes of Carryover |
予定していた学会・研究会がすべてオンラインとなったため次年度使用額が生じた。 出張ができるようになればこれに充て,状況が改善しなければ図書をはじめとした物品に充てる。
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