2018 Fiscal Year Research-status Report
中近世イタリアの民商事契約法学における言説空間の多元性
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18K12672
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
平野 秀文 千葉大学, 大学院社会科学研究院, 准教授 (60779544)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 司法制度 |
Outline of Annual Research Achievements |
2018年度は,対象とする地域・時代の司法制度の改革・変遷と法学者の著述との関係を把握する作業を重点的に行う計画であった。都市国家における司法制度との関連等において,各種法学書,判決集,助言集,等の文献ジャンルが微妙な緊張関係を伴いつつ展開ないし衰退していく傾向を主として二次文献により概観した。それらの知見そのものについては定評ある先行研究が存在することが多い一方,並行して走る複数の文脈のなかで個別の著述家をいかに評価するかという点についてはなお多くの課題が残されているのを確認した。特に商事法学上一つの結節点となる法学者Benvenuto Straccaの学説史上の意義については,各都市国家における商事裁判所の位置づけの差異およびそれに応じた法的言説の構造の差異との関連性を問題とする限りにおいて,これまで通用している理解に修正を加える必要をみる。従来,14世紀のBartolusから16世紀のStraccaまでの線は太く引かれており,またStraccaの著作の性質上そのように把握すること自体は間違いではないものの,その線を強調するためにBartolusの受容に関して今日共有されている問題設定が不鮮明になる傾向があることが確かめられた。もっとも,個別の都市国家に関する司法制度および助言文献については,研究成果をまとめるには至らなかった。本年度の作業として予定していたものの一部は,Straccaの契約法学に対する貢献および学説上の位置づけを再検証するなかで傍証としてなお追跡・検討していくことにしたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究計画上の一年目である本年度であるが,従来の研究課題から本研究課題の遂行へとスムーズに移行することができなかった。そのため,司法制度の概要等の整理にとどまり,個別の文献の具体的な検討は大幅に次年度以降に持ち越さざるを得なくなった。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度は,前年度の調査を補充しつつ,具体的な史料調査・研究交流を遂行する。対象文献の調査が不十分であることもあり,研究の順序を多少入れ替え,Straccaの著述を一つの柱として,諾成主義を中心として契約法学の史学的検討を進める。
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Causes of Carryover |
研究課題の進捗状況の遅れと同様の理由で,文献調査がある段階以上には進捗しなかった。2019年度には,現地調査および研究成果の公表に向けた作業と並行して2018年度にすべきであった文献の補充的調査もする予定である。
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