2018 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
18K12674
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
中村 瑞穂 京都大学, 法学研究科, 特定助教 (20807945)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 契約の清算 / 価値償還義務 |
Outline of Annual Research Achievements |
契約が無効(取り消された結果、当初から無効であったとされる場合を含む)ないし解除された場合において、契約にもとづき給付が履行されていたとき、契約の清算として、給付は返還されなければならない。しかし、目的物の滅失等により、給付を返還することができない場合は、どのように扱われるべきかが問題になる。この問題は、一般に、2017年5月26日に成立した「民法の一部を改正する法律」による改正後の民法のもとでは、価値償還義務構成(返還できない給付の価値を金銭で償還する)によって解決されると考えられている(但し、明文の規定が設けられたわけではない)。 本研究は、価値償還義務構成を前提とし、①価値償還義務が認められる根拠、②価値償還義務の要件(給付を返還することができない場合のうち、どのような場合に価値償還義務が認められるか)・内容(償還すべき価値はどのようにして定まるか)について検討し、各清算原因による相違点を明らかにすることを目的としている。 初年度である2018年度は、外国法の調査・検討を行った。特に重点をおいて検討したのは、2002年以降のドイツでの議論である。ドイツでは、2002年に債務法が改正され、契約が解除された場合については、価値償還義務に関する明文の規定が設けられている。そこでは、価値償還義務の要件・内容についても規定されている。これに対し、契約が無効ないし取り消された場合は、改正の対象とはされておらず、改正前と同様に、不当利得の一般法によって規律されている。しかし、解除法の改正は、無効の議論にも影響を与えている。そこで、これらに関する議論を中心に、調査・検討を行った。 また、上記のように、ドイツの解除法に関する規定を参考にするためには、ドイツと日本において、どのような場合に解除が認められるのかを比較検討することも必要になる。この点についても、調査を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度は、ドイツにおいて、解除法の改正が無効の議論にどのような影響を与えたか―解除に関する規定の立法趣旨がどのように理解されており、それが、無効の場合にどこまで及ぶと考えられているか―を参照することにより、ドイツにおいて、①価値償還義務が認められる根拠、②価値償還義務の要件・内容に関する問題に、清算原因の違いがどのように影響すると考えられているかを把握することができた。また、これらの議論と2001年以前の議論との関係を検討することで、ドイツにおける議論の変遷を整理することもできた。 本研究を進めるうえで、ドイツ法は、最も重要な比較法的検討の対象である。初年度にドイツ法を集中的に検討することで、残り2年間の研究の方向性を見出すことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、引き続き外国法の調査検討を進め、調査対象の範囲を広げる(なお、今年度は、学説の調査を主としていたが、次年度は、裁判例の調査も行う)。それらの外国法の検討の結果から、この問題について、どのような分析の枠組みが得られるかを検討していく。
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