2019 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
18K12677
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
田中 洋 神戸大学, 法学研究科, 准教授 (10456767)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 契約不適合責任 / 追完請求権 / 修補に代わる損害賠償 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は,前年度に引き続き,主として,売買における契約不適合責任について検討を進めた。その際には,とくに買主に引き渡された目的物が契約の内容に適合しない場合における買主の救済手段として,①追完請求権と②損害賠償請求権に照準を合わせた検討を行った。また,売買以外の契約類型に関するものとして,請負における契約不適合責任についても,追完請求権と損害賠償請求権の関係に着目した分析を行った。 その主要な内容は,次の通りである。 第1に,売買における買主の追完請求権の根拠と規律内容について,わが国におけるこれまでの議論と民法改正に至る議論を整理・分析するとともに,これに関する日本法とドイツとの比較法的分析を行い,その成果を書籍として公表した。そこでは,改正民法における規律内容の詳細な分析を行うとともに,契約類型の相違が追完請求権の規律に与える影響についても,一定の見通しを示した。 第2に,わが国の改正民法における売主の契約不適合責任の規律について,その概要を整理するとともに,ドイツ法および国際売買法(CISG)との比較分析を行い,ドイツで開催されたシンポジウム(Schuldrechtsmodernisierung in Japan aus rechtsvergleichender Perspektive)においてその成果を報告した。 第3に,請負における修補に代わる損害賠償の内容と限界について,従来の判例法理が改正民法のもとでどのような意義を有するかの検討を行い,その成果を公表した。そこでは,とりわけ,修補に代わる損害賠償の限界に関する従来の判例法理の基礎にある考慮が,契約類型の相違にかかわらず妥当するものであることを示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度に予定していた研究作業は,改正民法における売主の契約不適合責任の内容を分析し,比較法的な検証を行うことにあったが,上記の通り,その中心的部分に関しては,実際に成果をあげるに至っており,また,そのうちのいくつかについては,すでに研究成果の公表も完了している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,本年度の研究成果を踏まえて,契約不適合に対する救済手段ごとの研究を継続するとともに,その成果の公表を順次すすめていくことを予定している。その際には,とりわけ,売買などと比較した場合に,請負における契約不適合責任の規律内容がどのようなものとなるかに照準を合わせた検討を行うことを予定している。 また,改正民法においては,すでに,追完に代わる損害賠償に関する解釈論上の問題点が議論の対象となっていることから,この問題に関する分析を進めて,できるだけ早い時期にその成果を公表することを予定している。
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Causes of Carryover |
当該年度の年度末に本研究で使用する文献の出版が予定されていたことから,その購入のための費用を確保していたところ,その出版に遅れが生じたため,年度末までに購入することができなかった。そのため,それらの分の支出予定について,次年度使用額が生じた。 また,次年度において追加的な海外出張の必要が生じ,その出張費用として,次年度使用額を確保する必要が生じた。 次年度使用額については,翌年度分として請求した助成金と合わせて,本研究で使用する文献の購入費・出張費等のために使用することを計画している。
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