2019 Fiscal Year Research-status Report
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18K12679
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
米倉 暢大 神戸大学, 法学研究科, 准教授 (60632247)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 民法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、日本法の下での差押え及び差押債権者の実体法における位置づけを探るために、ドイツにおける差押え及び差押債権者をめぐる議論を検討しようとするものである。2019年度においては、主としてドイツ民法典成立後のドイツの強制執行法における議論の展開について検討を進めた。 差押えの位置づけをめぐっては,差押えに伴い差押債権者に付与される差押質権から処分権ないし換価権が分離され,処分権ないし換価権が差押え自体の効力に加えられた。これにより,差押えの効力には,主として,処分権ないし換価権と処分禁止効が認められることとなった。他方で,差押質権については,処分権ないし換価権のない担保権として,その法的な性質が問題にされるとともに,差押質権と差押えの処分禁止効との関係や個別執行におけるプライオリティ・ルールと包括執行におけるプライオリティ・ルールの異同が問題とされることとなった。これらの議論については,近時,新たな展開が見られるものやその兆候が見られるものもあり,現地で議論状況を調査するため,ドイツへの海外出張を行い,現地での資料収集及び現地研究者からの意見聴取を進めている。 ドイツの強制執行法制における議論は,民事実体法に関する統一的な法典に先行して進められたことから,独自の実体法上の規律を内包したものとなった。このことは,その後の民事実体法に関する統一的な法典の編纂及びその後の議論に影響を与えるとともに,強制執行法制における実体法上の規律もまた民事実体法に関する統一的な法典の編纂及びその後の議論から影響を受けることとなった。このような民事実体法に関する規律状況は,日本法においてもまた観察されるものであり,日本法の下での差押え及び差押債権者の実体法における位置づけを考える上で,参考になるものと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2019年度には、ドイツ民法典成立以降の強制執行法制に関するドイツの学説及び立法の展開を追跡し、強制執行法制にかかるドイツ法に関する検討内容の総括を行うことを予定していた。この点について,いずれの作業も完了させることができた。 さらに、今後の研究に支障をもたらすような事情も特に発生していない。 以上から、本研究は、おおむね順調に進展しているものと評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度には、ドイツ法について強制執行法制の制定と並行して進められていたドイツ民法典の編纂作業における議論を中心として,民法学上の差押え及び差押債権者に関する議論の検討作業を進める。
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