2019 Fiscal Year Research-status Report
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18K12681
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Research Institution | Kochi University |
Principal Investigator |
切詰 和雅 高知大学, 教育研究部人文社会科学系人文社会科学部門, 准教授 (40461008)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 電子記録の請求 / 無権代理 / 無権代行 / なりすまし / 表見代理 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究課題について、研究会での報告を行った。とくに重点を置いたのは、権限のない者(無権代理人、なりすまし)による記録請求である。 電子記録の請求は、電子記録権利者および電子記録義務者の双方がしなければならないが、共同でする必要はない。電子記録の請求を共同してしない場合には、双方の全てが電子記録の請求をしたときに、その効力を生ずることになる(電子記録債権法5条3項)。この制度が成立するのは、電子債権記録機関という、契約当事者の意思表示の合致の場を担う存在があるからである。つまり、民法や手形法においては、契約当事者の意思表示は直接的に合致するが、電子記録債権法においては、契約当事者の意思表示は電子債権記録機関を媒介して間接的に合致するのである。 現在、電子記録の請求における無権代理やなりすましの場合に、明文規定があるのは無権代理人の責任のみである(電子記録債権法13条)。したがって、無権代理およびなりすましの場合の本人の責任は、民法の表見代理規定が適用され、なりすましをした者の責任は、電子記録債権法13条が類推適用されると考えられている。しかし、電子記録の請求における契約当事者の意思表示の合致は間接的になされる。それゆえ、電子記録権利者には、民法や手形法における契約の相手方のように「この者は代理権を有している」等の信頼を有する機会そのものがないのである。むしろ、そのような信頼を抱くのは、電子債権記録機関の職員である。 電子記録の請求においては、契約当事者の意思表示の合致について、上記のような特徴がある。物事が通常通り進んでいる間は全く問題ないが、無権代理やなりすましのように病理現象が生じた場合には、上記のような特徴を法律行為の中でどのように位置づけ、どのような法的取扱いをすべきかを明らかにしておくことは、非常に有意義であり重要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り、研究課題について、研究会頭を通じて議論を重ね、資料の収集もできている。年度末には、新型コロナウィルスの影響で、文献が届かなかったり、研究会が行えなかったりしたが、おおむね順調である。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度には、電子記録債権法19条1項の適用範囲に関して、および、電子記録の請求における無権代理やなりすましが行われた場合の本人や無権代理人等の責任に関して、それぞれ論文の形で発表する。 2021年度には、電子記録債権法における消費者の保護(電子記録債権法16条4項)について取引安全の観点から検討する。また、不実の電子記録に基づく電子債権記録機関の賠償責任(電子記録債権法11条)の法的性質について、社債、株式等振替法における超過記載又は記録がある場合の振替機関の義務(同法78条、79条、103条、104条、145条、146条)と対比させて、検討する。いずれも論文の形で発表する。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルスの影響による。このため、研究会が1件開催されず、洋書文献が数冊、年度内に到着しなかった。 旅費に関しては、次年度の研究会の際に使用する。物品費に関しては、次年度文献が届き次第、使用する。
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