2020 Fiscal Year Research-status Report
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18K12681
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Research Institution | Kochi University |
Principal Investigator |
切詰 和雅 高知大学, 教育研究部人文社会科学系人文社会科学部門, 准教授 (40461008)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 手形 / 電子記録債権 / 善意取得 |
Outline of Annual Research Achievements |
「電子記録債権法における善意取得の適用範囲」(高知論叢120号201頁)を執筆した。 本研究は、電子記録債権法19条1項の適用範囲について検討したものである。周知の通り、電子記録債権法は手形法を模範として規定されている条文が多い。電子記録債権法19条1項も手形法16条2項(善意取得規定)を模範としており、立案担当者はその適用範囲について、手形の善意取得規定と同じであるべきとして、手形におけるのと同様に、その適用範囲を解釈に委ねることとしている。 手形の善意取得の適用範囲に関しては、譲渡人が無権利者である場合のみ適用されるとする見解と、無権利者からの取得のみならず、手形の譲渡行為の瑕疵一般についても適用されるとする見解とが、今なお対立している。本研究では、手形法16条2項と電子記録債権法19条1項との相違を指摘し、その相違が解釈に決定的な影響を及ぼすことに言及した。そのうえで、電子記録債権法19条1項の適用範囲について、譲渡人が無権利者である場合のみ適用されると結論づけた。 電子記録債権は手形とほぼ同様の厚い権利保護が与えられているが、同じ制度でも条文の文言が全く同じであるわけではなく、そもそも紙媒体ではなく電子媒体という相違がある。手形法の議論を参照としながらも、相違点に留意した検討が必要である。また、現在、紙の手形の廃止が検討され、電子記録債権等への移行が促されるような流れにある。それゆえ、電子記録債権取引における法的安定性をより高めることが重要である。本研究は、電子記録債権取引における法的安定性に寄与するものと思われる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
コロナウィルス感染拡大のため、研究会がことごとく中止になったり、文献の収集に思いのほか時間がかかったりしたため、若干、遅れている。しかしながら、今年度のうちにオンラインによる意見交換ないし研究会ができるように、パソコン等の環境を整備することができたので、問題はないと思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度は、第一に、電子記録の請求における無権代理やなりすましが行われた場合の本人や無権代理人等の責任に関して、検討する。第二に、電子記録債権法における消費者の保護(電子記録債権法16条4項)について取引安全の観点から検討する。第三に、不実の電子記録に基づく電子債権記録機関の賠償責任(電子記録債権法11条)の法的性質について、社債、株式等振替法における超過記載又は記録がある場合の振替機関の義務(同法78条、79条、103条、104条、145条、146条)と対比させて、検討する。それぞれ論文の形で発表する。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルスの影響により、洋書文献が数冊、年度内に到着しなかった。次年度文献が届き次第、使用する。
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