2023 Fiscal Year Annual Research Report
Research for new utilization of electronically recorded monetary claims
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18K12681
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Research Institution | Kochi University |
Principal Investigator |
切詰 和雅 高知大学, 教育研究部人文社会科学系人文社会科学部門, 准教授 (40461008)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 電子記録債権 / 意思表示規定 |
Outline of Annual Research Achievements |
最終年度は、「電子記録債権法12条1項の検討」を執筆した。電子記録債権法12条1項は、電子記録請求における意思表示に関する規定であるが、民法の意思表示規定との関係は次のようになっている。すなわち、当事者間の法律関係については民法の意思表示規定が適用され、第三者との法律関係については、その主観的保護要件が民法上「善意」と定められている規定(心裡留保、虚偽表示)に関しては電子記録債権法において何ら規定を設けず、すなわちそのまま民法の規定が適用される。また、民法上、第三者保護規定はあるが、「善意でかつ過失がない」(善意無過失)と定められている場合(錯誤、詐欺における取消前の第三者)および第三者保護規定のない場合(詐欺・強迫における取消後の第三者)に関しては、電子記録債権法12条1項において「善意でかつ重大な過失がない」(善意無重過失)と定めたうえで、同条項が適用されるのである。一見すると、電子記録債権法においては民法よりも取引安全の保護が図られており、何ら問題はないように思われる。しかし、とくに民法が解釈によって取り扱っている場面、すなわち、詐欺・強迫における取消後の第三者について、電子記録債権法は、解釈ではなく、明文をもって第三者の主観的保護要件を規律している。これによって、民法のきめ細かい解釈を電子記録債権法に持ち込むことができなくなり、また、善意の対象が不明瞭になってしまっている等、電子記録債権法12条1項の適用において注意すべき問題点がある。本稿は、それらの問題点等、同条項の妥当性について検討したものである。 上記論文のほか、研究期間には、「電子記録債権法における善意取得の適用範囲」および「他人になりすまして電子記録の請求における意思表示をした者の責任」を執筆した。いずれも、手形法における議論に基づいて検討しており、電子記録債権法の解釈・適用に寄与するものである。
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