2019 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
18K12683
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
棚橋 洋平 首都大学東京, 法学政治学研究科, 准教授 (90758070)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 事業再生 / 事業譲渡 / 清算価値保障原則 / 代替許可 / 連邦倒産法 / 再建型手続 / 倒産法 / 民事再生 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、再建型倒産法が平時の規律をどのように修整するかを、活用例の多い事業譲渡による再建という局面から考察することを目的とする。考察にあたっては、我が国の再建型倒産法の母法国であり、かつ、事業譲渡による再建も多くみられる米国における議論を参照することとしている。 2019年度は、前年度から研究を進めていた、事業譲渡による再建における清算価値保障原則の意義について、「事業譲渡による再建における清算価値保障原則の意義(2・完)―米国における清算価値保障原則の生成と展開を参考に」都法60巻1号165頁(2019)を公表している。 また、2019年度には、事業譲渡による再建における株主の地位、具体的には再生手続における代替許可制度における株主の地位について、米国法を参照しながら検討し、代替許可制度において株主の地位を制約できる正当化根拠および場面について分析したうえで、「債務超過」と「事業譲渡の必要性」という代替許可の2つの要件にかかる解釈論のあり方を、以下のように明らかにした。 まず、米国における議論を踏まえ、株主の地位の正当化根拠に立ち返って検討すれば、債務者会社が債務超過の状態にあれば、それだけで株主の地位を制約してよいとする有力説は妥当ではないとの結論を導いた。次いで、従来2つの要件は別個独立に検討されることが一般的であったように思われるが、本研究によれば、これらは相関的な関係にあると理解すべきであり、別個独立に検討すべき要件ではない、との見解に至った。こうした検討結果は、「代替許可における株主の地位―米国における議論を参考に」加藤哲夫先生古稀祝賀『民事手続法の発展』491頁(2020)として公表している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2019年度には、前年度検討を行った、事業譲渡による再建と清算価値保障原則をめぐる問題について結果を公表することができており、また、当初の予定通り、事業譲渡による再建における株主の地位についても、2019年度内に検討結果を公表することができている。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究において、事業譲渡による再建における債権者の地位、および、株主の地位を明らかにすることができている。2020年度は、こうした研究結果をとりまとめ、事業譲渡による再建における平時の規律の修整原理について、より総合的に検討を進める予定である。
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Causes of Carryover |
若手研究における独立基盤形成支援(試行)に採択されたため、本研究に要する費用の一部については、同支援を用いて支出できたためである。
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