2020 Fiscal Year Research-status Report
フランス会社法の「会社契約」概念にみる組合・会社・社会
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18K12688
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Research Institution | Japan Securities Research Institute |
Principal Investigator |
石川 真衣 公益財団法人日本証券経済研究所(調査研究部及び大阪研究所), 研究調査部, 研究員(移行) (00734740)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | フランス会社法 / 社会的企業 / 企業概念 / 株主権 / 社員概念 / 会社契約 |
Outline of Annual Research Achievements |
【フランスにおける会社契約概念の研究】本年度は、前年度に行った会社契約概念の意義に関する研究の成果となる連載論文を完結させた。この論文では、会社契約概念と特に密接な関係を有する「社員(associe)」概念を手がかりに分析を行った。 【2019年PACTE法に関する研究】また、本年度は、前年度に行った検討を基礎に、2019年PACTE法(2019年5月22日の法律第2019-486号)に関する本格的な検討を行った。2019年PACTE法は、非常に多岐にわたる改正を行うものであり、その対象は会社法に限らず、資本市場法、倒産法などにも及ぶ。本研究との関係で特に重要と考えられるのは、民法典1833条に新たに追加された社会・環境に対する会社の事業活動の影響に関する文言、民法典1835条に定められた会社の存在意義(レゾン・デートル)の定款上の記載に関する規定、及び「ミッションを有する企業」制度の新設である。これらはいずれも社会において会社が果たすべき役割に関する近時の国内外の議論を原点とするものであり、本年度の前半は、その議論の背景を探り、PACTE法の全体像を把握するための作業を行った。この検討の成果は、外国法制の紹介としてまとめ、大学紀要に掲載する機会を得た。また、本年度の後半は、このうち本研究に特に関連する改正部分について研究会で報告を行ったほか、EUにおける関連動向についても検討を行い、研究会で報告する機会を得た。これらの報告の内容の一部は、所属機関が発行する月刊誌に掲載した。 以上に加えて、本年度は、近時フランスにおけるアクティビスト株主(投資ファンド等)の動きが活発化していることを踏まえ、2019年PACTE法により一部見直された制度(実質株主の判明、外資規制等)の影響及び関連する事例の調査を開始した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は予定していた現地調査や海外書籍・文献の入手が不可能・困難となる状況が続き、一部の検討は先送りにせざるを得なかったため、当初の計画より遅れている部分があるが、収集済みの文献・契約データベースを基に、研究会報告や研究成果の公表は順調なペースで行うことができ、全体的な進捗に大きな影響が生じる状況には至らなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度も、新型コロナウイルス感染拡大の影響のため、延期していた現地調査及び資料収集を実施することができなかった。このため、次年度はその実施または代替的な方法によるヒアリング・文献入手の可能性を探り、また調査項目も精査することとする。 また、PACTE法の国内外での受け止め・PACTE法に基づくオルドナンスの内容・EUレベルの動向を引き続き検討する予定である。特に、本年度の初めには予期していなかったことであるが、新型コロナウイルス感染症が会社法分野の問題(会社の目的、配当政策、環境・社会的責任への関心の高まり、株主総会の開催方法など)に少なからず影響を及ぼしたことから、これらの変化が一時的なものとなるかそれとも中長期的に既存の制度の見直しをもたらすものとなるかに留意する必要があると考えている。本研究課題と密接に関係するテーマを扱う論文が多数掲載された文献を年度末に入手したため、これを手がかりに最新のフランスの議論状況を踏まえて研究を進め、まとめる予定である。
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Causes of Carryover |
2年度目に予定していた現地調査が延期となり、本年度も新型コロナウイルス感染拡大の影響で現地調査を実施することができなかった。今後の状況をみて、現地調査を実施できる場合には計画通り実施し、できない場合にはオンラインでのヒアリングなどの代替手段を用いて研究を進める。また、一部の文献は、同じ理由で年度内に入手することができなかったため、引き続き問い合わせ等を行い、入手方法を探る予定である。
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