2019 Fiscal Year Research-status Report
上場会社役員の報酬規制の在り方:適切なインセンティブ付与のための比較制度研究
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18K12690
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
原 弘明 関西大学, 法学部, 准教授 (70546720)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 報酬 / 取締役 / 役員 / インセンティブ |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、研究対象分野について重要な先行研究が公表され、そのフォローアップと内容の分析に注力することとなった。また、令和元年に会社法が改正され、本研究のテーマである役員報酬についても若干の改正が行われた。この内容についても分析を進めた。本概要では特に後者について簡潔に述べる。 令和元年会社法改正の法制審議会部会における議論においては、特に取締役報酬の株主総会から取締役会、そして代表取締役への再一任の実務を改めるべきかが検討された。端的に再一任をする場合には株主総会決議を経るべきとの見解も表明されていたが、最終的な立法はそのような明文規定を会社法本則に置くことはせず、その具体的内容は法務省令に委任することとなった。そのような内容を包括するものとして、取締役報酬の決定方針を株主総会で決議することとなっている。 本研究代表者がかつて検討したイギリスの報酬規制においても、類似の法規制が整備されていた。具体的な報酬内容、とりわけ現金・現物のミックスの方法について、株主が精通していることは通常なく、むしろその基本となる方向性を株主に判断させることが適切と考えられていることによる。 以上のような日英の状況は基本的には好ましいものであるが、報酬についての方針は当該企業の過去の状況と将来に向けての事業計画という現在の情報に基づいて決定されるものである。方針には一定の普遍性があるとは考えられるし、現物報酬もそれらを踏まえてアレンジされるべきものであるが、過去の状況を踏まえた実際の報酬額(の総額)決定という従前の実務との間に若干のズレがあることも事実である。このズレをお手盛りの弊害防止とインセンティブ付与の違いとして正面から認めて良いのか、さらに検討を進めたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
令和元年会社法改正の推移を見守っていたことや、海外書籍の刊行延期、新型コロナウイルス感染症に関連した海外書籍入手の遅延などが相まって、今年度の研究成果について活字にできなかったため、やや遅れていると自己評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
現在までの進捗状況にも記した通り、海外書籍の入手は引き続き一定程度困難になることが予想される。その場合には、今年度特に力を入れた令和元年会社法改正の分析をむしろメインに据えて行うこととする。 今後想定される世界的な景気悪化という状況は、本研究課題の深化に当たってもネガティブな影響を及ぼす可能性が高い。不況下においては経営者への積極的なインセンティブ付与の必要性が高いとは考えにくいからである。 以上の前提のもとに、入手し得た海外文献の分析は念入りに行うものの、全体として日本法そのものの研究ウエイトを増やす方向にシフトすることとしたい。
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Causes of Carryover |
研究進捗状況において述べたように、海外文献の入手が全般に滞っていたため、想定したよりも予算消化が遅れている。また、新型コロナウイルス感染症の流行に伴い、各種出張にかかる研究会そのものが中止されたり、研究代表者の所属機関所在地・住所地の状況に鑑みて出席を控えたことによる。 2020年度は上記の状況がさらに継続することが予想されるため、令和元年会社法改正の分析に必要な文献の収集にウエイトを置いて予算を使用することとする。
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Research Products
(1 results)