2021 Fiscal Year Research-status Report
特許法における当業者概念の具体的意義と機能――比較法的観点から
Project/Area Number |
18K12692
|
Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
西井 志織 名古屋大学, 法学研究科, 准教授 (80637520)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 特許法 / 当業者 / クレーム解釈 / 知的財産法 / 基準主体論 |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度は日本とドイツを主な研究対象とした。日本については、特許庁がAI発明に関して、各審査部門が担当する技術分野を超えて連携する「AI審査支援チーム」(管理職員等とAI担当官から構成される)を2021年1月に発足させたことを契機に、当業者の「チーム性」をどう考えるべきかについての考察を進めた。ドイツについては、古い年代のものを含めた論文を集め読み進めるなどして、平均的当業者が、開示、新規性、進歩性、クレーム解釈の基準主体として具体的にどのような内実を持つものと(または持たないものと)理解されてきたのかを、それぞれについての判例を確認しながら把握した。 また、当業者は特許法制を貫く中核概念の一つであるところ、特許法全体に広く目を配る中で、審決取消訴訟の当事者適格の問題にも取り組んだ。これまで議論が少なかった、特許権が共有に係る場合における訂正不成立審決取消訴訟の原告適格の問題について検討し、2021年8月に研究会報告を行った後、12月に論文の形で公表した(髙部眞規子裁判官退官記念論文集『知的財産権訴訟の煌めき』(金融財政事情研究会)所収)。 さらに、基準主体を視点とした研究を、特許法以外の知的財産法にも広げた。商標法4条1項8号につき新たなアプローチを示した音商標の裁判例を取り上げ、そこで、音の「人の氏名」としての認識可能性の基準主体が需要者に限られるか否かという点も含めた検討を行った。2021年12月の研究会で報告を行い、質疑応答を踏まえて検討した内容が、2022年6月刊行予定の雑誌に掲載される予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
Covid-19の影響により、研究資料の入手が予定通りに行えなかったり、研究者・実務家との意見交換を平時のように行うことができないなどの問題が生じた。研究に限らず、業務全体がCovid-19への対応を迫られたため、各所に支障や遅れが生じた。そこで、現在の社会状況下で現実的に遂行可能なサイズへと課題を絞り込んだうえで、引き続き国内外の法的状況の解明に努める。
|
Strategy for Future Research Activity |
現状分析のための基礎的な研究を続行する。研究会の中には対面を再開し始めたものもあるが、今後も従前ほど出張等ができるとは考えにくいため、オンラインでの研究会の機会を活用し、実務家・研究者と、関連し得る事項を不足なく視野に入れた意見交換を行いながら、研究を進めていく。
|
Causes of Carryover |
【理由】Covid-19の影響で、研究会が全て中止又はオンライン開催となる状況が2021年度も続き、毎月の関東・関西の研究会に出席するため計上していた旅費をほとんど使用できなかった。オンライン研究会での報告・意見交換を円滑に行うために必要となった物品や、必要な図書を購入させていただいたが、図書については、他経費で購入できたり有難くもご恵贈いただいたこと等から、次年度使用額が生じた。 【研究計画】2022年度の研究に必要な図書に加え、引き続き、研究環境の変化に対応するための物品の購入をさせていただくほか、対面参加が可能となった研究会への出席のために旅費を支出する。
|
Research Products
(3 results)