2019 Fiscal Year Research-status Report
A classification of public policy contributing to social innovation and an analysis of effect mechanism
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18K12698
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
小松崎 俊作 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 准教授 (70456143)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 社会イノベーション / 公共政策 / 官民連携 / 規制緩和 / 地方分権 / 地方自治 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,国内外の事例分析に基づき,社会イノベーションに貢献する公共政策の特定と類型化,各類型と地域活性化事業過程に及ぼす影響との関係のモデル化を目的とする.平成31年度/令和元年度は,平成30年度に続き,具体的な社会イノベーションを対象とした事例研究を実施して,対象事例において公共政策が果たした役割を明らかにすることとした. 官の戦略的キャパシティ低下によって民の創造性を発揮する自由度が生まれるメカニズムについて,スペインにおける再生可能エネルギーによる地域電力システムを対象とした事例研究を行った.本事業実施ならびに新たな地域経済の発展過程を分析した結果,電力事業の規制緩和と,1978年に制定された憲法で強調された地方分権の2点が作用したと推定された.具体的には,再生可能エネルギー導入を契機として,その特性を活かした新たなサービスやビジネスを,自治権の下市民らが自発的に創出していることがわかった.同様の地域電力システムを導入しようとしている日本においても,宮城県東松島市や群馬県中之条町の事例研究を実施した.日本では地方分権が十分進んでおらず,自治体等にそのシステムを活用するキャパシティが育っていないと考えられる.これらの比較から,地方分権制度に加えて,民が創造性を発揮できるためのキャパシティ開発が,社会イノベーション創出に寄与することが示唆された. 官民連携による社会イノベーションについては,コロンビア・ボゴタにおける都市貧困層向け電力利用正常化の事例研究を実施した.本事例では,民間事業主体が,電力料金を正常に支払う特典としてクレジットサービスを導入するという創造的取り組みを実施し,料金上昇にも関わらず未払い率が低下,顧客満足度は向上している.こうした取り組みを実現する上で,行政による適切な規制が民間企業のキャパシティ,インセンティブ形成に重要であったことがわかった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初研究計画において仮説として提示した3つの類型案について,それぞれ官民連携(平成30年度のマドリッド,平成31年度/令和元年度のボゴタ),規制緩和(平成30年度の日本における河川敷地利用規制緩和),地方分権(平成31年度/令和元年度のスペイン地域電力システム)の事例研究を完了できた.計画に沿って,おおむね順調に進展していると評価できる.
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Strategy for Future Research Activity |
令和2年度は研究最終年度に当たる.当初仮説として提示した3つの類型案は,事例研究に基づいて公共政策の影響を推定できた.今後は,仮説で挙げた3つ以外の類型の探索と,これら公共政策のデザインに向け,政策形成に関わる政治過程分析の2点を推進する.新たな類型の探索に関しては,社会イノベーションの事例を幅広く収集して,価値創出・問題解決メカニズムの類型化を行う.政策形成に関わる政治過程分析から,社会イノベーション創出に貢献する公共政策のデザインを支援する知識創出を行うために,これまでに分析した事例の中で調査が実施可能な事例について,追加の調査を実施する. なお,新型コロナウイルス感染症の影響を考慮して,国内で実施可能な調査に限定する.インタビュー調査は,オンラインもしくは電話によって実施することも想定する.
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